みちるリソースがこれまで文字によって紡いできた“幹”の部分

昨日の未明より、ぽつぽつと降り続いた雪の残り香が漂っております。こんな日は、過去の投稿を振り返りながら、これまで蓄積してきた暴論の数々を振り返りながら、思考の整理を行ってまいりたいと思います。先回で言及した通り、そろそろ、投稿が100を迎えます。非鉄金属スクラップ並びに、ベースメタル原料貿易、地政学について、思うがまま書き殴ってきたわけですが、いち媒体としての昇華を図るべく、みちるリソースがこれまで文字によって紡いできた“幹”の部分と、未来を創造してゆくための“枝葉”の部分を、明らかにしてみたいと思います。今回は、前者について言及します。

みちるリソースが、繰り返しお伝えしたいこと

  • 静脈(スクラップ再生)産業も革新が必要だ
  • 大局的な視野で物事を捉え、流動的に行動ができないと、飢え死に至る
  • 中国の“ヤバさ”というのは、一見荒々しい無謀な施策でありながらも、それが実際に将来のための荒療治であるということ
  • 「化かす(イリュージョン)能力の有無」が、"スクラップ"を取引する上での"旨味"に直結していた

静脈(スクラップ再生)産業も革新が必要だ

この暴論に関しては、『資源を再生し、儲かる商売として成立させるためには』という記事の中から抽出しました。この考え方は、筆者が当業界に足を踏み入れた時分より、強く感じていることです。

当業界は、殊に、「属人的な要素が強い」と思います。選別や加工手法にしてもそのようであるし、仕入れから販売までも、もちろんそのようであります。前者に関しては、ざっくり言えば、「人の手をかければ、キロ当たりの単価が〇〇円上がる」という思想です。後者に関しては、いわゆる、「あの人だとダメだけど、あの人ならイイ(=特定の人で取引が決まる)」という思想です。

極論を言ってしまえば、選別・解体手法のちょっとした違いで、付加価値が大きく変わるのであれば、市中一般の末端業者が、メーカーへ直接納入を行う業者と同じ仕様で荷造りした際に、市場における最高の単価で売れるということではないでしょうか。しかしながら、文字通り、「そうは問屋が卸さない」わけです。システムとして、“そのように”なっているからこそ、素人は玄人に太刀打ちできない。恐らく、江戸の商人文化の影響でしょうか。需要家は、大問屋から仕入れ、大問屋は仲買人然り、小規模の問屋から仕入れる。小規模の業者は、市中一般から買い集める。連綿と続いてきた文化なのだと理解しています。

筆者は、当業界を「下剋上の世にすべし」とは思いません。やや冗長的であることを否定しませんが、文化としての“エコシステム”を抜本的に変えることに意味はないと考えます。なぜかというと、“それ”を壊すことで、想定外のところに歪(ひずみ)なり、痛みが伴うことがあるからです。場合によっては、良かれと思ってやったことが、自分の首を絞めることに発展しかねない。“それ”が、淀みなく流れるからこそ、業界全体に潤いが与えられるものだからです。

時代は変わる

ただ、変えるべきことがあります。それは、業界に蔓延る“売上至上主義”の是正です。確かに、売上が立たなければ、会社の継続運営ができません。ですが、行き過ぎたところに、「高く売るために、手をかけよう。(選別・加工上発生する)ゴミの処分は、あとで考えればいいから」という“逃げ”があります。また、根拠がないにも拘わらず、「ゴミみたいなもんだけど、どこそこに持っていけば、高値で買ってくれるらしい」という“勘違い”があります。それらが、回りまわって、どこかに滞留して、にっちもさっちもいかなくなって、誰かの首が回らなくなるのです。その誰かが、自分になることだって、十二分に考えられます。

かつては、海外に輸出してしまえば、低賃金労働者がなんとかしてくれたわけです。これからも、どこかの第三世界で、そういったことは繰り返し行われるのでしょうが、いつかは、彼らも気が付くわけです。「なんか、割に合わないな」と。そうすると、彼らは、「山奥で燃やせばいいや。そのまま捨てておけばいいや」と考えるようになります。もし、世界の環境宗グローバリストの望む世界が拡大してゆくのであれば、世界はどんどんフラットになっていきます。いわゆる“掃きだめ”のような世界が縮小します。いずれは、現実的な手段ではなくなるのかもしれません。

時代は、変わるのです。「どこそこの第三世界に持っていけば…」などとよからぬ妄想をするよりは、与えられたエコシステムの中で、「どうやったら、有価物(廃棄物)の回収率を向上(低減)させることができるのか」ということ、「できあがった商品は、どこに、どのようにして売れば、最も付加価値をつけられるのか」ということに熱くなるべきではないでしょうか。それが達成できれば、ニッチな商材であればあるほど、当然のごとく利益は大きくなります。市場における優位性が劇的に向上します。価格の決定権を握ることさえできるようになります。

金属スクラップはコモディティ

金属スクラップは、これまでもこれからも、相場に左右される純然たる“コモディティ”です。かつてに比べ、売りにくいのは異物(ゴミ)のせいだし、割安なのは、違う金属(異材)が多く混入しているがゆえに、金属としての純度が低いからなのかもしれません。言い換えれば、“クリーン”であればあるほど、流通させやすくなるし、需要家が欲する品位に近づくほど、“それ”に対するプレミアムが高くなります。だからこそ、現在、電気銅相場が高止まりしているのでしょう。相場が示しているのは、“それ”の価格であって、二号銅スクラップのそれではないのです。

繰り返しになりますが、金属スクラップの流通性が低下したがゆえに、金属製品としての電気銅のプレミアムが増し、製品とスクラップの価格に乖離が生まれました。左記に述べた流通性の変化は、商品市場におけるスクラップの定義を再考する戦略的な動き、貿易上の取引(検収)基準の見直しが図られていたことに由来します。注意すべき点は、「金属スクラップ自体の商品性は、一切変わっていない」ということです。変わったのは、「一大消費国に入れられるか、入れられないか(=クリーンであるか否か)」という判断であり、それに沿って、電気銅対比での各スクラップ品位毎の料率も是正されるようになったのです。

結局、プライスリーダーあっての商売

妄想の世界のハナシですが、今、そこかしこで、「今の相場なら、かつて二号銅はこれぐらいで売れた」とか、「うちの二号銅は、ダスト少ないから品質が良い。高く買ってよ」などといった交渉が続いているものと思います。しかしながら、現実問題としては、目下、中国向けの基準では、「一号銅ではない雑多な銅屑は、論外」であるし、「ダストの多少で価値は変わらない」わけです。そもそも、規格外のモノは原料として成立しないし、ダスト云々というハナシは、通関をする上での検収基準に抵触するわけですから、論外の論外であるわけです。じゃあ、その“得体の知れないスクラップ”を、彼の大国以上の金額で買うところがあるかと言えば、それは考えにくい。プライスリーダーに勝つためには、別の思惑がなくてはなりません。

最終的な打開策として、それを日本国内の需要家に販売しようとなった場合、そこでも様々な制約が設けられます。荷姿然り、異物の混入具合などです。ああでもない、こうでもないと指摘を受けながら、どうにかこうにか商品を仕上げるわけです。なんとか納入までこぎつけ、受入時の検収もクリアします。幾ばくかの月日が過ぎ、販売先から、「御社の商品は、銅が○○%しかなかったので、評価金額はこのようになりますが、よろしいですね」と連絡が来るわけです。当然、これまで大陸に輸出していた二号銅と同等の評価を得られるモノと“期待”しているわけですから、“結果”に納得することができません。激昂しますよね。当該取引の販売先からは、「じゃあ、銅分何パーセント出ると思って売ったのですか」などと逆ギレされる始末。そうは言われても、今まで、「一号銅にならない銅屑」としての二号銅をつくっていたので、わからない。ひとつ言えたのは、「仕入れの時期によって違うけど、ダストは2%ぐらいだ」ということ…。

上記、よくあるハナシかつ、これから頻発するであろうハナシだと思います。かつての銅ナゲット製造合戦のように、「一生懸命つくったのに、返品になった!」みたいなハナシにはならないと思いますが、場合によっては相当揉めますよね。仮に、揉めなくとも、需要家サイドは、新参者を調整弁として利用します。手綱を緩めたり引き締めたりしながら、大陸の相場をみながら、“ほどよい塩梅”で商売をやっていくでしょうね。もちろん、一部のスクラップ・グレードによっては、日本国内の需要家向けの値段に優位性があり続けるでしょうから、それはそれとして、流通させる意義は残ります。まあ、結局のところは、国内で売るにしても、中国向けに輸出するにせよ、割安で売ることを良しとしないのであれば、「ピカピカでクリーンな原料としてお届けする義務」がつきまとうわけです。

今までと同じやり方で、今までの売り先が買ってくれる保証は、どこにもありません。今までのやり方で、新規販売先を開拓できるのかというと、それもあり得ません。筆者が、「静脈(スクラップ再生)産業も革新が必要だ」と嘯く理由は、そこにあります。「自分はこうだけど、お前はまだそんなことしているのか」といったマウンティングのための提言ではありません。革新が起こらず、業界全体が停滞することになんのメリットはないからです。停滞は死を意味します。もしかしたら、生き残れるのは、需要家と、今この瞬間、先進的な試みを行っている一部の業者だけなのかもしれません。

次回につづきます。

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