12/31/2019

2019年を振り返って

2019年は、個人的に大きな転換の年でありました。恐らく、いわゆる人生における"ターニングポイント"であったのだと思います。そして、苦しくも、辛くも、周りの方々に手を差し伸べていただき、なんとか、生きながらえることができました。一期一会を、一瞬を大事にすることの大切さというのは、文字に起こしても薄っぺらいものですが、本当に身をもって、人との繋がりや関わりによって「救われる」経験をすることで、ようやっと、ことの本質が理解できたような気がしてなりません。

業界の動向に関しましては、触れてもどうしようもない状況と言いますか、なんと評すべきか、まったくわからない境地にありますが、総合的にみて"死"に値するほどの天変地異、破壊が起きたことは言うまでもありません。ここで、どこぞの問屋が飛びそうだ、あそこの社長がどうのこうのと能書きを垂れるつもりは、毛頭ございません。市中一般、総じてやりにくい年であったこと、これまで辛酸を嘗めてきた需要家サイドで利潤の確保が積極的に行われたということは、純然たる事実であろうと思います。

甘えは通用しない

また、今後の相場動向含め、経営環境としては、引き続き"渋い"状況は変わらないのではないか、そのように考えています。また、これまでのように、「建値が上がったんだから、高く買ってよー」だとか、「なんだかんだ言っても、中国はスクラップ欲しがっているんでしょ。枠が出れば、良い値段で買ってくれるんでしょー」といった"甘え"は、通用しないものとして商売を行わないと、とんでもないしっぺ返しを喰らうとも考えています。例えば、「ボク、旧正月明けに、真鍮をタクサン買いたいんです」と言われても、そりゃあ、文字通り、問屋は卸さないですよね。高く買ってくれる保証など、一切無いのですから。もっと言ってしまえば、口約束した契約をきちんと履行できるのか、支払いが滞りなく完遂できるのか、まったくわかりません。

ここのところ、殊に強く思うのは、「中国のメーカーサイドは、欲しい欲しいというけれど、実際そんなに困ってないんじゃないか」ということです。そんなに欲しければ、今までのようにどんな手段を使ってでも、いわゆる"玉(ぎょく)"を押さえにかかるはずです。実際の彼の地の需要家群の様子はわかりませんので、推測の域を出ませんが、「(鼻くそをほじりながら)あー、安いスクラップないかなー。ないかなー」ぐらいにしか考えていないのではないか、そのように感じざるを得ません。

スクラップの使われ方は、各需要家によって全く違うと思いますし、彼らの眼に映るスクラップの魅力や"旨味"といったものも、同様に違うと思います。ただ、間違いないのは、「スクラップで製品をつくった方が"楽"だ(いわんや、地金の地合わせによる製品づくりは、"面倒"だ)」ということではないでしょうか。その"楽さ"というのは、地金調達に係るコストや原価計算が煩わしいのかもしれませんし、スクラップ原料の品質が担保できれば、そのまま鋳込んで、チャチャチャと成分調整して、ポーンできる点にあるのか、はたまた、炉の特性上、スクラップの方が扱いやすい等、色んな要素があると思います。

やりにくくなった

しかし、それほど、日本国内の消費は一向に進まない。世界的にも、スクラップの需要は低迷している。なぜか。それは、度々当ブログで申し上げているかと思いますが、環境問題云々でもなく、米中の貿易戦争でもなく、「地球規模での地政学上の覇権構造が抜本的にひっくり返った」という事実に集約されると思います。この数年の間に、「米国が産油国としてナンバーワンに」なりましたし、その前には、石油利権の金字塔を建立し、中東利権を思うがままに操ってきたとされる、バーバラ・ブッシュが亡くなられました。極東地域におきましても、江沢民・胡錦濤体制から習近平体制に変わることで、香港・マカオ、シンガポールで巨額のカネを運用してきた既得権益層も、相当に「やりにくくなった」のだと思います。現在の香港の惨状、東南アジア地域全体に降り注ぐ先行き不安。「お金の流れが濁り、弱くなる」ことで、幹から枝葉に波及してゆく様が鮮明に浮き彫りになっています。

例の如く、少し脱線いたしましたが、我々の業界におきましても同様と言いますか、もっと単純な説明ができると思います。つまり、「覇権構造が抜本的にひっくり返った」ことで、一時的に「お金の流れが濁り、弱くなり」、そして「巨額のカネを運用してきた既得権益層」ならびに投資家群が、資金回収のサイトが長い雑品・雑線ビジネスから手を引いた。そういうことではないでしょうか。

かつて、日本から中国へ"資源"を引き込んでいたのは、街道沿いの胡散臭い貿易屋さんでも、ニンボーの真鍮メーカーでもありません。左記の投資家たちが、それぞれの"シマ"と"シマ"を繋ぐことで安定的な利益を獲得するために、自分たちの手を汚すことなく、ただただ大陸へ流し込んでいただけに過ぎません。一概の貿易屋に、誰がファイナンスしたのでしょう。博打好きな大陸の方々でも原資がなければ、賭け事もできません。製品の販売代金の回収さえままならない、一概の需要家が、相場の変動リスクを負ってまで、小さな島国のスクラップを巡って、一喜一憂する余裕と気概があるのでしょうか。

現在、左記の投資家群が「左団扇の楽な商売できねえな」と判断したからこそ、より”市場性”のある銅精鉱や鉱石類の商売にシフトしたのだと考えています。彼らの仕事は、「お金を流すこと」ですので、いくらスクラップが儲かるとわかっていても、"流れ"のないところに投資する必要性がない。

環境問題云々と言っても、本当に儲かるとわかっていれば、それを黙殺させるぐらいのことはやってのける気負いがあったはずです。ただ、今は「賭けと安定」を天秤のうえに乗せたときに、後者が勝っている。彼らにとって、リスキーなものを、高コストで運搬して、販売するまでの手間が「面倒臭い」のでしょう。かつては、船賃も安く、解体の進捗・納期が明確で、需要家の買値もプレミアムの上にプレミアムが乗るような、まさに売り手市場であったからこそ、販管費が安く済んだ。もう、そんな時代じゃないんですよね。

ブルーもいいけど、レッドも

翻って、じゃあ、ボクはこんな不確定性の高い時代に、なにをやるんだい、ということですが、原点回帰と申しますか、いわゆるレッドオーシャン戦略で行こうと思います。ビジネスの根底にあるところだと思いますが、人がいっぱいいるところには、なにかその、人が集まる"なにか"が絶対にある。人がぶつかり合うことで、商売が活性化する可能性もある。そのように考えています。もしかしたら、今はレッドオーシャンでも、淘汰が進むことで、ブルーオーシャンに変わってしまうかもしれない。これからは、なにが起きるかわかりません。とにもかくにも、ぶつかっていくしかない。ただし、闇雲に当たり散らすのではなく、戦略的に。非常に難しいことだとは十二分に認識していますが、そのようにやっていきたい。不確実な世の中で儲けたい。やります。

12/29/2019

これは妄想です。電池の未来

かつて、金属材料について調べ物をしていたときに、なんの気なしに保存した記事をみつけました。2016年のそれですが、今、この時分に"ググって"みても、あまりヒットしてこない。つまり、あまり技術的な躍進がない、もしくはうまくいっているけど、大人の事情で公にできないということだと思います。(十中八九、前者でしょうが。)

題して「リチウムを超える『アルミニウム』、トヨタの工夫とは 」です。記事のイントロをそのまま、引用します。

電気自動車に必要不可欠なリチウムイオン蓄電池。だが、より電池の性能を高めようとしても限界が近い。そこで、実質的なエネルギー量がガソリンに近い金属空気電池に期待がかかっている。トヨタ自動車の研究者が発表したアルミニウム空気電池の研究内容を紹介する。開発ポイントは、不純物の多い安価なアルミニウムを使うことだ。

こんなこと言われると、「不純物の多い安価なアルミニウムって、なんなんじゃあ!なんや、そこそこの品質のスクラップだったら、使うてくれるんかい」などと飛躍した期待を抱いてしまいます。記事を読んでいくと、トヨタさんの真意が少し垣間見れる。つまり、いわゆる純度4ナイン(99.99%)レベルの原料で電池を作れと言われれば作るよ?だけど、原料費が嵩むし、環境負荷(精錬費用等)を考えれば、持続性も高いとは言えない。だったら、そこそこの原料で、うまく使いこなす技術を我々で考えてみましょうよ」ということらしい。素晴らしいと思います。

この記事の中で話題になっているのは、一次電池としての利用前提の話とのこと。つまり、「一回こっきりしか使えないけど、なくなったら、交換すればいいじゃん」という使われ方。その翌年には、「冨士色素、『アルミニウム-空気電池』の二次電池実用化に目処」という技術革新もあったようです。

では、なぜ、この素晴らしい技術が、現代において広められていないのか。(もしくは、ただ、筆者が知らないだけというケースもあります。)ここからは、都市伝説信奉者特有の一種の妄想です。ご注意ください。

数年前、世界的な識者、偉い方々が集まる秘密会議で、このような発言があったそうな。

電気自動車やろうか!てか、やりますからね。皆さん、ご協力頼みますよ。あ、なんかね、皆さんご存知のイーロン君。彼、頑張っているんだよねえ。彼は、充電池で地球を変えたいのだそうな。ま、それを、我々としても、応援しようじゃありませんか。マークは、そろそろダメ。ま、とにかく、充電池でやるってことは、充電する場所がなければ、ダメだよね。つまり、充電ステーションをつくりまくりましょう。インフラ整備です!2021年ぐらいを目処にドーンとぶちかましましょう。

要は、潮流として、(1)二次電池を主として採用するということ、(2)世界的な恐慌後の起爆剤としてのインフラ整備事業の中核が、充電ステーションの建設に当たること、(3)レアアース需要を高め、金融の面で原産地(主に極東地域)へ資金を流入させるということが、大局として決定しているということだと思います。もう一度言いますが、これは妄想です。

12/12/2019

メーカー"側"は潤っている

なんだか、パッとしないですね。ここのところ、ずっと。相場は上がっているみたいですが、なんだかきな臭い感じは払拭できないです。なんだか、奥歯になにかが詰まったときのむず痒さというか、変な時間にコーヒーをがぶ飲みして、寝たいのに寝れなくなって、焦燥感に苛まれて、朝を迎え、そのあとの生産性ガタ落ちのときに感じる虚無感のようなものを感じざるを得ません。まあ、なにを言いたいのかわかりませんが。

年の瀬を迎えるにあたり、これからの非鉄金属スクラップ市場の行方を占ってみようと思い、先輩方や市場関係者にヒアリングを行いました。まず、とにかく間違いないことは、「誰も、この先どうなるのかわからない」ということです。特に、かつての北京オリンピック景気に伴う、資源バブルの恩恵を十二分に享受できた方々は、ものすごい不安に思っているようです。「寄らば大樹の陰」ではないですが、牽引役や模倣する対象が存在しない。なにをしたら良いのかわからない。こういった悩みとでも言いましょうか、ボンヤリした、まさに《虚無感》は、業態の規模、種類問わず、我々の業界全体に大きな大きな暗い影を落としているようです。

海外メディアからの情報によると、おおよその概要は下記の通りのようです。

<アルミ>

<銅>

もはや、相場がどうなるとか、トランプがどうのこうのとか、そういった話は関係ないのかもしれません。もう既に決まり切った大局をきちんと理解し、"オカミ"の要望に応える形で、決まった量、決まった品質のものを安定的に流通させる。それが、我々、非鉄スクラップの取引に携わる人間の使命として当然のものになるのでしょう。

今後も、相場自体は、継続してボラティリティの高い状況が続くでしょう。そして、これまで"ふつー"に売れていたものが、明日は売れなくなるかもしれない。つまり、在庫を抱えることがリスクでしかなくなり、いわゆる"コモディティ"としての「いつでも間違いなく売れるもの」以外を適正マージン以下で仕入れる意味がなくなる。

市中の皆さんは、もう、ものすごく肌感覚としてビシビシと感じていらっしゃると思いますが、「メーカー側は潤っている」ことは間違いないですね。純粋な"儲け"だけで物語ることはできないかと思いますが、端的に申せば、色んな意味で「やりやすくなった」ということだと思います。

例えば、これまで原料問屋と現場との狭間で右往左往されていたメーカーの調達マン、商社の方々。今となっては、「(いちおうは物腰柔らかく)いやあ、ホント申し訳ないんですが、お察しの通り、製品が売れませんでして…世界的にも同じ潮流でして…中国が…」といった風情の説明であっても、ある程度の理解は得られることでしょう。かつては、そこまでの信憑性のある説得材料は持ち合わせていなかったことと思います。どうしても、購買量の調整が必要となれば、「(どぎまぎしながら)いやあ、再来月後半から炉の定修が入ってまして…申し訳ないんですが…」的な説明しかできなかったことと思います。まさか、スクラップを他のところから買いすぎて、現場から「もう買ってくるなよ!あそこの原料、使いづれえんだよ!」などとドヤされての苦肉の策で絞り出したセリフだとは、死んでも問屋さんに言えないですよね。

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