8/26/2020

中国向け金属“原料”貿易は、もはやものづくり

ここのところ、朝夕の風がとても心地よいです。しかしながら、からだの方は、この急激な変化に適応できていないようでして、本調子とは言えません。ベースメタル相場も、相も変わらず、よくわからない。巷のメタルスクラッパーと話をしていても、やれ、メーカーは高く買わないだとか、まあ、輸出向けもそれ以上に“渋い”だとか、絶対的に断言できることは、「市況改善なし」ということです。

これまで散々言及してきた、例の“既定路線”の件ですが、だんだんと想定通りのきな臭さを帯びてまいりました。前回のポスト、『中国バッシングで米国企業が割を喰っていますが、その狙いはなんでしょうか』にて、「それぞれの業界に支持母体があります。果たして、両業界へのコンセンサスは、卒なくとれていたのでしょうか」という提言をしました。その“両業界”とは、まさに「原料を欲している側」と「税金を徴収したい側」です。

その「なんとしてでも、原料を安定的に集荷したい側」が、あらゆる手段を講じて、物量の確保に動く一方で、「なんとしてでも、付加価値の高いモノから税金を確実に取りたい側」は、一生懸命裏をかくために画策します。これは、どこにいっても法規制や税を少しでも回避するために行われる、A対Bの攻防戦です。ここで厄介なのは、この対立構造のなかで、利権を生み出すCとDという人間が存在するということです。

各種利権構造一覧

代表的な一例が、需要家側に対して「滞りなく荷物が流通できるよう、役人に話を付けますよ」という方々。一方で、税関側に対して「そんなに(輸入貨物が)信用できないのであれば、私たちが現地で確認してきますよ」という方々。

かつて、米国におけるゴールドラッシュ時代、なにが一番儲かったのかといえば、あるのかないのかわかりもしない金鉱で働く労働者なり、採掘事業に進出する業者への物品の販売やら、斡旋、コンサルティング、リーガルマターの対応などであったそうです。

おそらく、これまで対中国向けの“廃棄物”貿易で、リスクゼロの安定商売を築いていたのも、米国のそれ同様、商機の中心ではなく、その周辺にぶら下がる企業であったのだと思います。そして、今、熱量の小さくなってしまったマーケットの惨状を目の当たりにして、彼らは、彼ら自身の権益を必死に守ろうともがくのです。

誰がために鐘は鳴る

久しぶりに、欧州を中心とするリサイクル業界の組合である、BIRのウェブサイトを確認しました。すると、今般の“既定路線”に関する情報が掲載されていました。一部の国内業者筋でも話題にされている、「業者の登録制度」に関する実務的な説明です。

事の表層的な部分しか追えていないので、実際のところ、どのように運用されていくのかは、一切わかりませんが、第一印象としては、「誰のための制度なのか」ということです。政府の施策ではないし、いち業界団体が、ある程度の口添えを税関に対して行うことはわかるのだけれど、じゃあ仮に、なにか起こったときに、誰が責任をとるのかといった具体的な指針も見えてこない。

ひとつ、明確に“おもしろいな”と思わせるくだりがあります。それは、「出荷前の検査を実施する」ということです。大風呂敷を颯爽と広げてみたものの、結局のところ、やれることといったら、前と変わらないわけです。そして、そこには検査対象となる項目も、高らかに宣言されておりますが、蓋を開けてみれば、「3年以上の貿易経験あるか」だの「実態のある企業か否か」など。要は、「中国向けの“廃棄物”貿易をする上での通関上の“温度感”なり、今後、中国が求めていく“原料”がなんたるか、ということについて精通している業者なら、安心して国境を跨がせてやろうじゃないか」ということだと捉えています。

伏線の回収

中国向けスクラップ輸出、溶かせばいいのか (2019/10/27)』

込銅(ISRI基準で言うところの"Birch/Cliff")なんかは、結局なところ"miscellaneous(=雑多である)"が基準の中で認められています。こういった不確定要素、かつての"旨味"は、おそらく排除されるであろうと思いますし、されなくとも厳しい目が向けられることとなり、なんらかの制裁を受けるようなリスクが出た場合においては、買う側も売る側も、当然のごとく躊躇するでしょうし、流通も細くなると思います
今後、仮に6類が完全禁止になり、成分が確かなもの、先方が仰る"原料"しか流通しなくなった場合、なにが起きるのでしょうか。個人的な感覚論で恐縮ですが、筆者が税関の人間で、「手堅く、間違いなく税金を獲得する方法はないか」そのように考える必要に迫られた時、恐らく上司に提案するとしたら、「あのお、やはり、拡大解釈できる表現はやめるべきだと思うんです」などと言うかもしれません。

世界のあちこちで、ポジショントーク砲が炸裂しています (2020/01/23)』

もしこのまま、[“既定路線”]が適用されるとしたら、「本当に困ってしまう」のは、米国のサプライヤー陣だと考えています。なぜなら、彼らが一生懸命作り上げた「ISRI独自の品質基準、商品性を担保していた解釈を、中国の"それ"が蔑ろにしている」からです。

非鉄金属スクラップの世界に、専門商社はもういらない (2020/04/13)』

米国のリサイクル協会であるISRIには、貿易部会という名の"非常に閉鎖的な"会合の場があるわけです。その会員のなかには、中国やインドなどに事務所を置く、大手のスクラップ業を営む会社の役員、経営者が多く含まれているわけです。日本の某上場会社も参加しているはずです。いわゆる、権力者たちの集いです。もっと簡単に言ってしまえば、「中国にスクラップを流通させるための結社」です。そして、とても不思議なことなんですが、その"御大"が、いわゆるISRI規格を策定する部会の重役でもあるんですよね。
筆者がひとつ挙げるとすれば、"QC機能"ではないでしょうか。こう言うと、「スクラップに品質管理かよ。もはや、ものづくりだな」と思われるかもしれませんが、その通りだと思います。バイヤーサイドとしては、「我々の欲しいアレ」をわかってくれるトコロがあれば安心できるし、セラーサイドとしては、「ウチの品質は、実はアレなんだよな」といった不安を払拭することができれば、彼らも安心できます。今後、スクラップ貿易の現場でも同様に、「出荷前の品質を確かめたいんだけど、コロナのせいで、サプライヤーの国に入国できない」という事態に当然発展すると思います。そういったときに、なんらかのかたちで品質を担保する術が求められるはずです。

手前味噌で大変恐縮ですが、左記の通りになりそうです。件(くだん)の“検査項目”の中には、「QA(Quality Assurance)=品質保証が適正に機能しているか」という項目があります。年に一回の定期監査も行うような言及がございます。かつても、このような要求事項は存在していたのでしょうか。

時代は、「もはや、ものづくり」です。

参照:"英文版出炉—再生铜铝原料国外供货商及国内收货人资质认定的管理办法"

蛇足

2020年度11回目のライセンス付与先と数量が公表されていました。

10、11回目の銅に関連する事業者の内訳を比較してみましたが、ほとんど南部の浙江省台州市、広東省清遠市・仏山市に所在する企業で、一部天津もありましたが、微々たる数量です。中国における銅関連の企業が、いかに南部に集中しているのかということがわかります。

参照:"Chinese quotas for waste & scrap imports: full list of 11th batch 2020"

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8/20/2020

中国バッシングで米国企業が割を喰っていますが、その狙いはなんでしょうか

8月も終わりに近づいてきました。金属リサイクル業界におきましては、これまで7月がひとつの節目として認識されていました。いわゆる、「中国、“廃棄物”ライセンス制をやめるってよ」問題です。業界の噂(誰が言ったかわかりませんが)として、「同月以降は、中国側での“原料”輸入に関する基準が明確になり、それが即時適用(旧制度、即時撤廃)となる」ということでした。

それがどうでしょう。今となっては、「事情通を装った関係者が、また、言ってるよ」といった感じで、完全に市中一般ならびにメーカー等の関係者様方は、完全に“白けモード”です。当ブログでも、件の“即時適用論”について言及しています。間違いなく言えることは、「品質要求事項を厳格化し、高品質な“原料”を定常的に集める」という“大綱”のもと、付帯的な要素として、「通関システムを刷新し、効率化を図り、関税を間違いなく徴収する」という“戦術”を適用するということは、かなり前から討論され、純度の高い政策決定がなされていたということです。いわゆる、これまで当ブログでも散々言及してきた、“既定路線”であります。

中国関連タグ一覧: https://www.michiru-resources.com/search/label/中国

もし、ここで言い訳じみた、能書きを垂れることが許されるのであれば、ひとつ申し上げたい。“戦略”は、どこにあったのか、と。

恐らく、崇高な思想・理念と、実利的な改革がうまく合致し、なにをしていけば、それが達成されるのかということは、明確に描かれていたのでしょう。ただ、筆者個人の見解で恐縮ですが、「良いモノを集める」ということと「確かに税金を徴収する」という行為の間に“大きな隔たり”があります。そして、それぞれの業界に支持母体があります。果たして、両業界へのコンセンサスは、卒なくとれていたのでしょうか。また、それらの“ギャップ”をどのようにして埋めるのかという“戦略”は、誰が、どのように描いていたのでしょうか

要は商圏であり、通貨である

ハナシは、毎度のようにブレにブレます。昨今、トランプさんは、“中国人民解放軍系”企業が開発した製品を排除することで、頭がいっぱいです。日本のメディアでは、「中国対米国の二項対立」で物事を単純化させ、あたかも「中国は悪者」であるかのように事態を簡略化させます。

果たして、現在の国際政治というか、ネオ帝国による地球政治の相関図をそのような解像度の低い視座で理解してよろしいのでしょうか。

ややこしくなるので、シンプルにいきます。

  • TikTokが禁止になることで、米国民の生活に影響が出ますでしょうか。
    • いいえ。明らかに、損をしたのは、北米の商圏を失ったTikTok側です。
    • 事業会社である、ByteDance社の米国事業を、米国会社に事業譲渡することで、誰が得するのでしょうか。
  • WeChatが禁止になることで、米国民の生活に影響が出ますでしょうか。
    • はい。なぜならば、中国大陸市場におけるAppleユーザーが、他の地場メーカー(Huaweiを筆頭とする)へ鞍替えする可能性が高い(iPhoneが売れなくなる)からです。
    • 決済、ID管理、与信管理機能を付与されたアプリが、明日から自分のケータイで使えなくなるということは、日常に対する死の宣告に近いものがあると思います。
    • Appleが被るであろう損害は、計り知れないモノがあります。
  • Fortniteがアップルストアから排除されることで、米国民の生活に影響が出ますでしょうか。
    • はい。なぜならば、アップル側が「(大きな商圏を取りこぼすことに恐怖を抱き)ごめん。うちのマージン減らすから、戻ってきて」と妥協した場合、最終的に、アップルによるアップルストアの統治に綻びが生じ、アップルの企業価値を毀損する可能性が大いにあるから。
    • ゲーミング市場における決済の流動性を止めたとき、想像を絶するうねりが実体経済に影響を与えると思います。
    • ゲーム内の通貨を、本来の目的とは別の用途に必要とする方々がいます。
    • Appleが被るであろう損害は、計り知れないモノがあります。

左記の“原料”通関制度にも深く繫がるハナシですが、結局のところ、現在の“戦争”は、「クニ対クニの喧嘩」ではありません。中国にも、共産党があって、人民解放軍があって、それぞれがひとつの思想・理念のもと、一枚岩であるかのように振舞いながらも、それぞれに思惑・利権がある。同様に、米国でも、党派の違いを超えた、利権構造がある。

個人的には、トランプさんは、「中国が嫌いだから、ちょっかいを出す」ような人ではないと考えています。確かに、彼の“民意上の”支持基盤に対して、ドラマティックな振舞いが最も訴求力があり、効果的なのでしょうが、実際には、もっと深いところ、もっと高いところに作用するような攻撃を、思慮深く、粛々とこなしているようにも思います。少なくとも、彼の“実利上の”支持基盤であり、彼を操作しているとされる方々の思惑は、彼の行動の一挙手一投足をみていれば、自ずとみえてくるはずです。

「Appleが損をするかもしれない」と理解しながらも、なぜこのように大きく出るのか。これが、単なる小手先の選挙対策なのか。仮に、そうであった場合、このアクションを使って、どのようなレバレッジ効果を期待しているのか。次の手は、なんなのか。まったく見当もつきません。

我々が、身をもって理解していることは、ただひとつ。前回の大統領選で、「トランプが勝った」ということと、「相場という相場すべてにプラスの影響を与えた」ということです。

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8/17/2020

住商の四半期決算が出ましたが、今後の資源ならびに金属原料開発の未来はいかに

お盆が終わりました。しかしながら、うだるような猛暑は過ぎ去ってくれません。人類における有史たかが数百年をもとに、温暖化だの寒冷化だのと断定すること自体がナンセンスだと思いますが、この一瞬を生きる我々にとって、「梅雨が明けそうだ」とか、「今夜は、熱帯夜になりそうだ」といった予報は、とても大きな意味を成します。巷では、「数十年後の地球」について、熱心に語られますが、それは“希望的”観測でしかありません。もし、「過去の人間が言った通りに歴史が動く」のであれば、それはもはや、“予報”でも“観測”でもなく、ただの“八百長”です。

これまで、度々、非鉄金属業界における巨人である、住友グループについて言及して参りました。

住友関連タグ一覧: https://www.michiru-resources.com/search/label/住友

ここにきて、住友商事の2020年度第一四半期(153期)の決算報告が発表されました。様々な媒体で報じられていることですが、マダガスカルのニッケル鉱山プロジェクトで大きな痛手を被ってしまったとのこと。筆者個人としましては、むしろインドネシアのカーファイナンス事業やら、その他消費財寄りの事業における痛手の方が大きいものと思っていました。

参照: 住友商事 | 2020年度第1四半期 (2020年4月1日~2020年6月30日)報告書

調子(景気)の良いときには、世間はこぞって、資源開発に弱い総合商社をけなします。一方で、それが悪くなれば、「資源開発は高リスク」だから、常に分散とヘッジをと言います。要は、みんな「わかっている」はずなんです。「山を動かす」ということが、博打であると。だからこそ、筆者は足元の状況は、健全ではないけれど、“普通”だと捉えています。

だからこそ、恐い。消費財関連のマイナスが、想定以上に表出していないようにみえるからです。これまでも、言及してきたことではありますが、消費財関連は、いかようにも“水増し”ができます。ノルマとインセンティブの狭間で、「よきにはからえ」と白を切る上司に好かれようと、忖度する。見栄を張る。こういったことは、生産財においてもあり得ることかもしれませんが。(ローソンでも、同様の行為が行われていたことが、先日報道されていました。)

何が良いとか、何が悪いとかではなく、みんな悪い

この期に及んで、ネタが尽きてきたからといって、「貴金属相場がどうのこうの」と、のたまうつもりはありません。いくら、今後、ゴールドが上げるとわかっていても、買えないですよね。今は、高すぎて。次の買いのタイミングは、いったいいつ頃なんでしょうか。

金の兌換制度が復活したときでしょうか。いずれかの大国が崩壊したときでしょうか。もしくは、東南アジアの王国起因通貨危機に乗じて、でしょうか。仮に、市場原理というものが、本当に未だに機能するのであれば、いずれは下げるのでしょう。いつかは、買うべきタイミングがやってくるのでしょう。ただ、わかりません。そんなことは。バフェットが金鉱山株に熱を上げようが、それは下々の人間には、わからないのです。もしかしたら、バフェットは、間違っているかもしれない。

それ以上に、我々は、自分の身の回りをきちんと整理していかないといけない。これまで、戦後の復興期より連綿と受け継がれてきた、いわゆる“当たり前”が崩壊した今、なにをすべきか。誰を守るべきか。誰と組んでいくのか。ウィルスにい対して、どのように対峙し、どのように付き合っていくのか。

これは、市場の原理原則だと思いますが、「誰よりも早く成功したければ、先駆者(パイオニア)になれ」という考えがあります。果たして、これまで同様、誰でもわかるスクラップを仕入れて、規格通りの原料に仕上げる商売が、正しいのか。王道なのか。もっと儲けるためには、他人と違うことをすべきなのか。しばらくは、眠れぬ夜が続きそうです。

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8/10/2020

屑屋のウェブマーケティング戦略のあるべき姿とは

いやあ、前回の『大局観を持って、王道を歩んでいれば、死ぬことはないですよ』は、跳ねなかったです。個人的には、けっこう核心に迫ったポストだと思っていて、最近のベスト4ぐらいには入るかと思っていました。ただ、やっぱりこの手のオンライン情報を発信する上での定説とでも言いますか、「人は、タイトルでいかようにも"釣れる"」ということを思い知らされます。当然、"釣る"気があるのかというと、そんなことはないのですが。

でも、また違った視点で、最近のアクセス状況を探っていくと、結構に興味深い事実がみえてきます。それがなにかというと、「定期的にアクセスがある」ということです。今までは、ポスト後の数日がいわゆる"賞味期限"でしたが、最近はと言うと、数は少ないですが、コンスタントにアクセスいただいています。国別のアクセスでみると、圧倒的に米国が多いですね。既報の通り、ロシア、中東も見受けられます。過去の記事に関しても、遡って複数の記事を読んでいただいている方々も確認できます。ようやっと、リサイクル業界における、ひとつのコンテンツとして、インターネットから認知されるようになったのかもしれません。言い換えれば、今まさに、過渡期というか、いわゆる"踊り場"にいるということです。

コンテンツ発信者として、今、考えなければならないのは、「今後、なにを指標(目標)にやっていくのか」ということです。産廃系の業者さんであれば、環境事業の一端を一般に知らしめるために、アクセス云々関係なく「発信を継続する」ことに重きを置かれるかもしれません。市中一般から、スクラップを買い付けしている業者さんにとっては、相場変動時に、逐次、価格表を発表し、少しずつ新規のお客さんを増やしていくことが肝要となることでしょう。

ただ、ひとつ言えるのは、「これまでと同じウェブマーケティングを続けていたら、疲弊するだけなんじゃないか」ということです。政府の補助金を使って、ウェブサイトをつくってみたのはいいが、あまり訴求効果が得られない。逆に、アクセス数が減った。もはや、なんのために構築したのかわからない。そんな声は、いくらでも聞こえてきそうです。今回の政府の大盤振る舞いの波に乗ったのは、あなたではなく、中小企業診断士やら税理士の先生方と、そこに紐付く業者の皆さんだけだったのかもしれません。

巷では、「TikTokの米国事業が、競合会社に買われる」だとか、「日本でも、米国同様にTikTokが使えなくなる」というニュースが駆け巡っています。なんのこっちゃ、うちには関係ないとお思いの方も多くおられると思いますが、今後の"営業戦略"を構築する上で、このニュースを注視できないのであれば、相当にやばいと思います。(煽りすぎでしょうか。)

ひとつのアプリが、どこそこの国で使えなくなったからといって、そんな熱くなることない。そのような考え方も間違っていないのかもしれませんが、ひとつ当方から提言させていただきたいのは、「今や、"ひとつのアプリ"が、"ひとつの経済圏"として成立してしまう現実がある」ということです。WeChatにしても、同様のことが言えますが、ただの"おはなしアプリ"ではないんですよね。AliPay(PayPay)なんかは、決済、与信管理、個人情報管理。投資から保険まで、ありとあらゆる商業行為を行う上での必須項目が網羅されている。仮に、ひとつのアプリで、すべてのコミュニケーションが完結せずとも、「中華製アプリを連携させることで、何不自由なく、すべての取引が行える」わけです。米国は、その"経済圏"が怖い。欲しい。米ドルの陰が薄くなってしまうことに戦戦恐恐としているのです。

卑近な例を出しますと、「中国のスクラップ貿易業者が、国家的な与信能力が著しく低い国に向けて荷物を仕向ける場合」です。まずは、相手方の与信調査で、二の足を踏みます。次に、L/C発行に難儀します。最後に、ドル決済で悩みます。これが、まさにこれまでの貿易上の悩みの種でありました。仮に、今後、人民元決済なのか、それに紐付いた仮想通貨なのかわかりませんが、要は、"SWIFT文化圏の外"でリアルタイムの支払いができ、与信管理に難儀する必要がなくなった場合、貿易業者の足枷は、理論上は無くなるのです。

そして、これ以後は、筆者の妄想の世界なんですが、今後、仮に「コンテナへの積み込みの際に、必ず一連の作業をビデオ撮影するように」といったお達しが出たときに、テクノロジーの進歩が現在のペースで進行した場合、どのようなことが考えられるでしょうか。まあ、おそらく、「AI解析検査員の登場」ですよね。危険物や禁止物質の積載を恐れる船社にとっても、コンテナ積み時の自動検査や、内容物の担保ができれば、ものすごいメリットを享受できそうです。もしかしたら、コンテナの中に、カメラを搭載することが当たり前になるかもしれません。コンテナを受け入れる国にとっても、AIが申請した内容に対して、そのまま税を課税できれば、もの凄い効率改善が期待できます。

しばし、「戦争を経て、テクノロジーは発展する」と言われたものですが、現在の状況を戦時下と捉えるのであれば、近いうちに、我々が考えられる次元以上の"変化"がもたらされる可能性は、大いにあります。たかが、ひとつのアプリですが、されど、「それはひとつの経済圏」なのです。また、ウェブマーケティング戦略に関しても、同様のことが言えると思います。果たして、これまで"ひとつのかたち"として機能してきた、「ホーム、会社概要、許認可、環境に対する思い、連絡先」は、今後も通用するのでしょうか。"刺さるマーケティング"とは、いかに。

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8/08/2020

大局観を持って、王道を歩んでいれば、死ぬことはないですよ

つい先日の出来事ですが、お世話になっている社長さまと、長々と"今後"について話し込んでしまいました。なんといっても、不透明な市況。商品の流動性についても。最終的には、お互いの事業戦略について話が及びました。本当に、心から嬉しく思うのです。何がというと、こうやって、お互いを尊重・理解しながら、腹を割って話をすることができる人が、近くにいるということです。

というのも、このハナシを持つ以前に、「なんだかなあ」と思わせる事件に巻き込まれたのです。簡潔に申し上げれば、「商圏を飛び越える」輩が現れたのです。その当事者にとっては、商売決まったら、ご飯にでも連れてって、それとなく済ませようとでも思っていたのでしょう。世の中、そんな簡単にいかないですよね。個々人が少しずつ積み上げてきた関係性を、電話ひとつで簡単に乗り越えられると思う、その浅はかな商売に対する不埒な姿勢が、筆者には理解できないのです。いずれ、ボロが出るでしょうから。知らないふりをして、ヘラヘラして、うまく使い回してしまえばいいのかもしれませんが、それは筆者の"スタイル"ではない。「(ごう)」というコトバがありますが、一瞬の損得で動きたくない。思想が古いでしょうか。

前回、『"湿式"貴金属精錬事業者の株価やばいね』というポストをしました。その後、数日経って、見事に"乾式"メーカーの株価も見事に持ち直し、「なぜ、あのとき売った」と自責の念に苛まれ、自分自身の大局観の無さに辟易としていました。これが、株というギャンブルのマジックですよね。「こうなったらいいのに」と思う、人間の心理の綱引き合戦です。決算がどうのこうのと言っても、結局は、それ以上の仕手筋ポジションが大きければ、それは当然のごとく、"重い方"にバタンと傾くわけです。

胡散臭いニュースが多いですね

そうです。今回は、気になるニュースが山ほどあったので、それをメイントピックとしたいと思います。

NNA ASIA 経済ニュース『ト州に非鉄金属産業団地、東南アで初めて

こういうニュースは、「ふーん」で済ますと、手痛い思いをすると思います。字面だけを追うと、「タ・ウィングループという銅線会社が、リサイクルにまで手を出すらしいよ。すごいね。ちゃんちゃん」です。しかしながら、同社が宣戦布告している内容は、「中途半端なリサイクル業者は、はよ消えてくれ」ということだと思います。この手の「エナメル線が主力の会社」をナメてはなりません。恐らく、大陸の意向でもあると思いますが、全部"かっさらって"いくかもしれません。毎度、説明がよくわからないですか。

あいつら、マジでおいしいところ全部持ってくよ

要点は、たった二つです。まず、彼ら(Ta-Win)は、商圏を収奪します。いとも簡単に、やってのけてしまうかもしれません。なぜかというと、彼らに「おたくの工場、うちのエナメル線使ってるよね?じゃあ、スクラップと製品をバーターで交換しようか」と言われたら、従うしかないですよね。他社製品を使う工場でも、バーター取引を提案されたら、なびいてしまうでしょうね。あまり、深いハナシはしませんが、「そもそも、"スクラップ"という商材における等価交換なんて、実現可能か」ということです。余計にわけがわからなくなったかもしれませんが、要はあれですよ。「グレーな部分が増える」ということです。非常に依存性が強い薬物です。中間業者の介在価値は、ゼロに近づきます。

もうひとつの要点。それは、左記に繋がるハナシでもあるんですが、「これは、カッパーロッドです」と通関申請した時点で、品位の違いあれど、それは、「伸銅業者で使う素材」として取り扱いされます。それ以上でもなく、それ以下でもなく。それが、例えば"それ"が、シックスナインであろうと、棹銅(さおどう)であろうと、貴金属を含有するアノードであろうと、「それは、紛れもないカッパーロッド」なわけです。要は、「その値段、誰が決めたの?」と首をかしげたくなるモノが、平然と国境を越えていきます。

なかなか、明るいニュースが出てきませんね

日本経済新聞『伸銅品生産量、6月29%減 コロナで45年ぶり低水準

思わず、純和風顔で「ワオ!」と叫んでしまいました。中身を精査せずとも、タイトルだけで飯が三杯くらいイケそうです。未曾有の不景気というのは、こういうことを言うのでしょうね。何度も言いますが、「リーマン・ショックなんて、ただのお遊びだった」ということです。また、もうひとつの側面としては、これまでも多々言及していることではありますが、「ここまで下げたら、上がるしかない」ということです。いつ"アゲ"るのか、そんなことがわかったら、そのときは億万長者だと思いますが、とにもかくにも、セオリーは左記の通りであると思います。

これまでも、これからも、うまく"混ぜる技術"が

LNEWS『JX金属/大分港大在西地区にリサイクル原料物流拠点開発へ

このニュースも、まあ、なんというか、色気のない、特定の好き者向けの浮いたハナシですよね。個人的には、大好きです。新工場の間取りが出ているんですが、興味深いですよね。ふたつの分かれた建屋に、圧縮機、その隣にもうひとつ保管庫。なにか品種や品位の違う、ふたつの原料を混ぜて、圧縮するということでしょうか。心が躍りますよね。詳しい事情は、まったくわかりませんが、何か新しい動きをなさっているような気がしてなりません。いずれにせよ、仮にそのような思惑があるのであれば、圧縮する対象物は、「まとまりが良いモノ」でないとなりません。それは、なにかを破砕したモノでしょうか。炉の温度を下げるためでしょうか。それとも、お湯をつくるための原料でしょうか。

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