9/16/2021

ミックスメタルの今後を考えてみる

先日、人生の師と仰ぐ方に、このブログをみていただいたのですが、「小難しい」との酷評を得ましたので、以後、気を付けたいと思います。確かに、自分で見返しても、「長ったらしいなあ」と思うばかりで。隙間時間に殴り書きしたメモをもとに、ちまちまと夜更かしをしてしたためるのですが、言いたいことがいっぱいあって、ついつい冗長的になります。アクセス数は、おかげさまで微増ながらも成長しているので、やめることはありませんが、時間対効果を考えると、やり方を変えるべきだと実感しています。新しい切り口で、攻めてゆきたいものです。

“ミックスメタル”ってなんだろう

最近、業界の中では、このコトバをよく耳にします。例えば、「中国が、ミックス・メタルの輸入を渋っている」とか、「国内需要家向けミックス・メタルの検収基準がどうのこうの」などです。

過去の実体から考えると、前者は、業界でいうところの“雑品”、一般の方から見たときの“ゴミ”に該当します。かつては、そのまま中国国内に船で運び込まれ、ひとつひとつ解体され、同国国内の金属原料として、再生されていました。

そして、後者の意味合いは、「車を破砕し、鉄分を取り除き、選別をしてその他の金属分(主にアルミニウム)を抽出したもの」ではないでしょうか。一般的には、アルミの合金を製造されているメーカーが購買しているものと考えられております。

つまり、“ミックス・メタル”の定義は、ひとつに括ることが難しく、「色んな金属の集合体(=複合金属)」といった概念でしか言い表せないのです。最終的には、いずれも金属の原料となります。

ナッツとメタル

適切かわかりませんが、業界外の方々に説明をする際、筆者は、このような表現を使います。「ミックス・メタルのリサイクルというのは、粉々になった“ミックス・ナッツ”から、特定のナッツ(金属)を『どうにかこうにかして』取り出す作業です。白っぽいクルミやらカシューナッツ、マカダミアナッツが、鉄とアルミ、ステンレス。赤茶っぽいアーモンドが“銅っぽい”モノです」と。あくまでも、想像の世界でのハナシです。簡略化しすぎでしょうか。

そして、あともうひとつ、大事な構成要素を忘れていました。5番目に、「粉っぽい部分」を挙げさせていただきます。

  1. クルミ(鉄)
  2. カシューナッツ(アルミニウム、亜鉛、マグネシウム)
  3. マカダミアナッツ(ステンレス)
  4. アーモンド(“銅系”)
  5. 粉っぽい部分(ダスト、回収・評価の難しい金属)

「ナッツは、“ミックス”であるがゆえに、商品価値を増します」が、スクラップ・メタルは、“ミックス(雑多)”であればあるほど、価値を失います。金属を再生させるためには、極力、似通った性質のものをひとまとめにして、効率よく、同質のものを均一につくり還す必要があるからです。言い換えると、いくら粉々になっていようとも、ゴミのように見えようとも、確実に、成分を同質にすることができれば、それを喜んで欲しがる人がいるということです。

以下、マニア向けの内容になりますので、ご注意ください。

ZorbaとTwitch

実のところ、ミックス・メタルには、“規格”が存在します。米国のリサイクル啓蒙団体であるISRIが、これを定めました。この規格に沿って“原料づくり”がなされ、各品種ごとにそれぞれの相場が形成され、“貿易品目”として、世界中で流通しています。流通量の最も多い品種でいうと、 Zorba (ゾルバ) 。上位品種には、 Twitch (トゥウィッチ) という品種が存在します。前者は、「9割以上を非鉄金属(鉄以外の金属)で構成するもの」とし、後者は、「ダストの混入を2%までに抑えた、アルミニウム主体のもの」と定めています。左記の“ナッツ”で表現すると、前者は、「クルミなしのミックス・ナッツ」であって、後者は、「カシューナッツの色味とか、重さとかで等級を3つ(アルミ、亜鉛、マグネ)に分けた中の美味しい部分」であります。

参照: https://www.isri.org/recycling-commodities/scrap-specifications-circular

翻訳: https://www.deepl.com/ja/translator

Zorbaの定義

各金属の割合は、買い手と売り手の間で合意される。渦電流、空気分離、浮遊、スクリーニング、その他の分離技術、またはそれらの組み合わせによって生成された材料。1つまたは複数の磁石を通過したものであること。放射性物質、ドロス、または灰がないこと。本ガイドラインに基づいて売買される材料は、「Zorba」と表示され、その後にその材料の推定非鉄金属含有率を示す数字が続くものとする(例:「Zorba 90」は、その材料が約90%の非鉄金属を含むことを意味する)。

Twitchの定義

湿式または乾式の媒体分離装置から得られるもので、材料は乾燥していなければならず、最大1%の亜鉛、最大1%のマグネシウム、最大1%の鉄を含んではならない。合計で最大2%の非金属類を含まず、そのうち1%以下はゴムおよびプラスチックであること。過度に酸化したもの、エアバッグキャニスター、密封されたもの、加圧されたものを含まないこと。買い手と売り手の間の特別な取り決めにより、あらゆるバリエーションが販売されること。

その他の規格

ミックス・メタルの規格は、これだけに留まらず、Twitchの兄弟分に、アルミの純度を下げた"Tweak"。モーターを破砕したあとに得られる、"Elmo", "Sheema", "Shelmo"。電線を加工したあとの"Zeyda"。ステンレス主体の "Zurik"。扱う範疇が広すぎて、もはや規格として成立していない "Zeebra", "Zeppelin"なる規格も存在します。

伏線の回収

冒頭で「中国が、ミックス・メタルの輸入を渋っている」とか、「国内需要家向けミックス・メタルの検収基準がどうのこうの」といった類のハナシに触れた伏線回収を行います。結論から申し上げると、「もう、中国には、Zorba入らないでしょう」ということと、「検収基準は、どんどん厳しくなって当然だよね」ということです。

中国向け“破砕アルミ”の展望

この類のハナシは、もはや“たられば”ではありません。中国政府発行のGB/T 38472-2019 『再生鋳造铝合金原料』 の中で、破砕されたアルミニウム原料は、「金属分として99.1%以上、アルミ成分として91%以上。サイズを (1) 70mm以上、 (2) 28~70mm未満、 (3) 5~28mm未満の3区分に分け、混入量に対する許容値をそれぞれに設ける」とあります。字面だけ追っかけていけば、左記のTwitch基準でも達成できるか、微妙なラインです。つまり、中国が欲しているのは、“ミックス・メタル”ではなく、溶解炉に直接投入できる単一の“原料”ということになります。

検収基準を厳しくする理由

『マレーシア、スクラップ輸入の廃棄物基準を厳格化 (Malaysia to tighten scrap import waste thresholds) 』

マレーシアは、8月31日までの猶予期間を延長し、10月31日以降、金属スクラップの輸入に使用される廃棄物の基準を正式に強化する。

7月16日から始まった暫定期間中、マレーシアは銅、アルミニウム、鉄スクラップの輸出業者に対し、非金属廃棄物は重量の0.25%まで、回路基板またはEスクラップは0%までに制限するよう求め始めた。

米国のシュレッダーの中で、中国が要求している99%のゾルバパッケージを輸出市場向けに製造できるのはごく少数であり、99.75%のパッケージを製造できるのはさらに少数です。

今回のマレーシアの発表は、東南アジアにおける米国産スクラップの新進輸入国であるインドネシアが、中国やマレーシアなどの同地域の貿易相手国の動向に反して、廃棄物(ダスト)許容量を2%に拡大すると発表した直後のことでした。

突然ですが、昨今の“第三国事情”を先に述べさせていただきました。おそらく、「中国の通関基準厳しくなったよね。日本のそれなんか、もとから厳しいし、これからもっと厳しくなるんじゃないかなあ。苦しい状況だねえ」などと言えば、「いや、マレーシアがある!」みたいなリアクションが出てくると思ったので。

たしかに、東南アジア仕向けの低品位スクラップ貿易は、なくならないと思います。ただ、彼らは、大陸同様、メンツをとても大事にしますし、「ハーモニーという名の同調圧力」にとても弱いです。他の国が、「基準緩めちゃおうかな」と言えば緩めるだろうし、「まだ、ダメっぽい」ということを感じ取れば、大々的に方針転換することもないと考えています。

そうすると、パキスタン辺りの国々が、手を挙げるのでしょうか。どうでしょう。そもそも、このコモディティ全般における異次元相場、物流費が高止まりする状況が続く前提でハナシを進めますが、中小規模の会社にとって、「直接の輸出行為を通して、返品(シップバック)になる大きなリスクをとるよりも、妥当な値段で買ってくれる大手ローカル企業に売り切ってしまう」方が現実的です。大企業としては、最新鋭の設備に投資し、例の基準に沿った“モノづくり”をすることで、規模を追求することができます。

おそらく、各国が、足並みを揃えて「検収基準を厳しくする理由」は、なによりも、「ゴミ(ダスト)を買いたくない」という点ではないでしょうか。仮に、海上コンテナ25トン分のミックス・メタルに、2%のダストが混入していたとしましょう。そうすると、価値のある金属と一緒に、500kgもの価値のないゴミを受け入れることとなります。当然のことながら、スクラップ輸入量に比例して、ゴミを受け入れる量も増えてしまいます。各国が、脱炭素の流れで、数パーセント単位でその排出削減目標を立てている中、「金属原料がたんまり手に入っているから、ゴミはじゃんじゃん燃やせ!」といった政策が成立するでしょうか。“グリーン”で“スマート”な生き方が求められる世の中では、“ノー”です。

個人的な思い

個人的には、高コストなハイスペック・マシンが、すべての答えではないと考えています。なぜならば、目新しい技術は、往々にして「“品質の沼”にハマって、コストが二の次」に陥ってしまいがちだからです。長い目で見たときに、持続性がありません。そして、大企業の寡占化にも危機感を覚えています。陣取りゲームのように、「勝者総取り」の世界に希望はないからです。この分野は、思いの外、まだまだ“奇想天外”なやり方で、新たな価値を生めるものと捉えています。いつも言っているような気がしてなりませんが、ぶっ飛んだアイデアで「一山当てたい」ですね。

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9/07/2021

大きな大きな都市鉱山利権

もはや、語気強く「やんややんや」と申し上げるネタもなくなってきました。

この“騒ぎ”も、傍観すると「ヤマ利権関係者の悪あがき」の様相を呈しております。もしくは、これも、長らく講じられてきた“資源政策”の一環なのかもしれません。この“小芝居”を掻い摘んで書き記すと、おおよそ以下の通りであると思います。

  • 中国のアフリカ地下資源利権の地盤固めが終わる
  • 中国、オーストラリアの地下資源に対して牽制
  • オーストラリア、その挑発にのる
  • ベースメタル相場高騰
  • オリンピック閉幕
  • 中国、アフガニスタンの地下資源利権を獲得
  • ギニア、世界情勢の混乱に便乗してクーデター
  • ベースメタル供給、逼迫継続(操業停止、物流寸断等)
  • ベースメタル需要、大量の資金投入によって高水準維持
  • ベースメタル相場、高値維持

今後、「相場が上がるのか、下がるのか」、そんなことは神のみぞ知る事象であります。ただ、ひとつ明確なのは、現在の中国は、世界の鉱物資源を巡る駆け引きの中で、相当に優位な位置にいるということです。ギニアが調子に乗るようであれば、資金援助を打ち切って、オーストラリアに声をかければいいし、後者が強気な姿勢を貫くなら、前者をバックアップすればいいだけのハナシです。

手前味噌で恐縮ですが、ちょうど昨年、弊ブログにて『中国主導のアフリカ銅山開発は、順調なようです』という記事を投稿しました。一度は、したり顔で「ほら言ったこと」と知ったかぶってみたいものです。

実際のところ、「アルミのギニア推し、銅のコンゴ推し」は、2019年頃から既に、“既定路線”として、堂々と語られておりました。そして、その当時から、「なんらかの“ショック”があること」や、それを起点とした産業構造の転換が極端に推進されることも、明確に言及されていました。(その頃の“雰囲気”は、『メーカー"側"は潤っている』にて。)

都市鉱山開発に係る補助金減らしてみたよ

参照: Sustainable Japan 『「中国での金と銅のリサイクルコストは資源採掘価格を下回る」米化学会論文発表

中国では2011年にリサイクル法「WEEE(電気電子製品廃棄物回収処理管理条例)」が発効し、正規のリサイクル業者は政府から補助金が支給されるようになった。例えば、調査対象のあるリサイクル業者によると、2015年に平均13.83kg のブラウン管テレビ1台から原料回収にかかったコストは16.95米ドル(約1,818円)。補助金の13米ドル(約1,394円)を差し引くと、同社の負担額は3.95米ドル(約424円)となる。

つまり、中国では、日本でいうところの“小家電”や、海外でいうところの"E-Scrap(Waste)"を適正処理することができる業者に対して、補助金が払われていたということです。実に、係るコストの四分の三を占めます。

銅はリサイクルコストの方が5%安く、金は82%も安かった。…2010年から2015年の間、バージン材料がリサイクルコストを下回ることは一度もなかった。

文字通り、いわゆる“リサイクル活動”から各ベースメタル、ひいては貴金属を回収する方が経済合理性が高い、ということです。

現状では、テレビ、パソコン、携帯電話、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機等、年間4,000万t以上が廃棄されており、2020年には5,000万tにまで膨れ上がると見られている。

この内容が指し示すのは、「将来的に、同国国内で発生するスクラップの量(=都市鉱山における潜在的なベースメタルの埋蔵量)が間違いなく増える」ということであり、「場合によっては、もう、海外から集めなくても、十分なんじゃないか」といった提言があっても、なんら不思議なことではないということです。もうひとつ、歪んだ邪推をさせていただくと、おそらく「件の補助金は、年々下げられているんじゃないか」ということです。下げれば、大方の企業は、旧来の労働集約型を維持できなくなるし、販管費を抑制しようとすれば、機械化、自動化に走ります。追随できない企業は、吸収されるなり、解体されるなりして、淘汰あるのみです。もしくは、販管費の安い第三国へ進出します。

そこにきて、同国政府は、貿易に依存する企業に対して、「以後、“廃棄物”は、通しません。“原料”として認められるもののみ!」と高らかに宣言したわけです。海外鉱山の権益を間違いないものとし、国内の都市鉱山からの安定的な供給を見込めるのですから、「得体の知れないゴミ」を国内に持ち込む必要性は、無いに等しいです。産業構造を、一夜にして一変させることで、雨後の筍のようにして現れた「得体の知れないゴミ処理業者たち」を排除することに成功したわけです。もっと言ってしまえば、為政者の息のかかった「清廉潔白な原料メーカー」を育て上げ、安定的な税収を獲得するにも至るわけです。

そして、対外的には、「環境政策として、もう、ゴミはやりませんよ」と喧伝します。まあ、確かに、「得体の知れなさ」が排除されるわけですから、表層的な部分では環境に良いのかもしれません。ただ、実際のところは、第三国で煮たり焼いたりするなり、同国国内で曲がりなりにも“正規のやり方”で、ゴミは“原料”に置き換えられるわけです。おそらく、実際に、“負荷”としては、ほぼほぼ変わっていません。その“責任”は、ヨソへ転嫁するなり、「脱炭素に向けて、環境に良いことをしているから、ご褒美だね」と、悪い部分とオフセット(相殺)できる。まさに、これが、全世界で起こっている“環境対策”の主流ではないか、そのように筆者は考えています。

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