ロシア情勢絡みでパラジウムのことも気になるけど、アメリカの資源政策も気になる【銅】

日本の“ワグネル関連ネタ”に関する報道の消極姿勢、これには参りました。真偽不明ですが、米国でも、各地で大規模の軍事演習が行われていると聞きます。今後、日本の報道が、どの程度の鮮度をもって、世界情勢を描き出していくのか、見ものであると思います。

本日は、二本立てでお送りします。お品書きは、下記の通りです。

  • パラジウム相場、EVの見通しと成長リスクで後退
  • 億万長者フリードランド氏、米国は銅を重要な金属と位置づけるべきと語る

パラジウム供給は不足しているのに、電気自動車にフルベットで相場は下げ

参照: MINING.COM - "Palladium price in retreat on EV prospects, growth risks"

この期に及んでも、パラジウムの話をします。ロジウムもそうだと思いますが、昨年の10月頃までの間、飛ぶ鳥を落とす勢いで、バッキバッキのボラボラで上げ調子でありましたが、近ごろは元気がありません。

参照: 田中貴金属 『産業用相場情報(2023年5月)

6,720円でスタートした5月の円建てパラジウム相場は、ドル建てパラジウム相場の急騰を受け、11日には月間最高値の7,045円まで上昇した。…月末にかけてドル建て相場が急落したことで、月末31日には6,510円で終了した。

MINING.COMの情報によれば、パラジウムの供給は、引き続き逼迫していますが、昨今の自動車産業における“エレクトリフィケーション”の流れに伴い、「触媒需要が激減する」との見立てから、市場はかなり弱気のようです。

素材メーカーのジョンソン・マッセイは約4万3,000オンスの供給不足を予想しており、パラジウム市場は今年も供給不足になるとみられる。

個人的には、「ロシア情勢とパラジウム相場が、強く結びついている」という側面ばかり気になってしまい、正直なところ、この“弱気相場”に納得できずにおります。なんの根拠もなしに、勘ぐることは良くないですが、「誰かなんか仕込んでない?」と感じるほど、不穏な空気が流れているような気がするのですが。はて。

ノリリスク社の5月定期レビューには、こんな解説がなされています。

参照: NORNICKEL - "Nornickel presents metals market review"

パラジウム使用量の80%以上を占める自動車セクターは、2020~2021年のCOVIDとサプライチェーン関連のショックから徐々に回復しつつある。今年の世界乗用車販売台数は前年比6%増の8,600万台に達し、緩やかな成長が見込まれる。…今年のパラジウム需要は1%増加すると予想される。

生産者側としては、「ゆるやかな需要の伸びを期待し、足元の実需に関しては、これまで積み上げた在庫の消化によって、大方問題なく消費されるであろう」といった視点で俯瞰していることがわかります。このまま何事もなければ。

2022年~2023年上半期には、自動車メーカーや触媒シス テムメーカーを中心とする市場参加者が過去に積み上げたパラジウ ム在庫が使用されるため、パラジウム不足は相殺されるであろう。同時に、大量の在庫調整が終息する2023年下 半期には状況が一変すると予想される。2024年にリサイクルの伸びが再開し、需要の回復を上回れば、パラジウム市場は均衡状態になると予想される。

IVANHOEの創業者が放つ、銅への絶対的な自信

久しぶりに、“黒光りする眼”をみましたね。この記事は、Bloombergが同社創業者のフリードランド氏に行ったインタビューなのですが、今後、「(米国において)銅が“クリティカル”な資源とみなされるか否か」という点、「国内での鉱山開発にどの程度の影響を及ぼすのか」という点において、至極真っ当かつシンプルな答えが用意されています。

氏は、明確に「銅は、“クリティカルな資源”として脚光を浴びる」と断言したし、「米国内での銅鉱山の開発を推進してゆく」という前向きな姿勢を示しました。以前、弊ブログ(『【後編】米国の銅鉱山開発計画とその周辺の出来事(無駄に長いよ)』)においては、アリゾナ州を中心とした利権団体が、政府に対して、働きかけを進めている旨をお伝えしました。

数年前から、米国リサイクル関係者(特に、西海岸の老舗)の間で、「米国に銅製錬所は、新設されるべき」みたいなハナシが話題となっておりました。左記の弊投稿でも言及しましたが、鉱山開発が本格化し、製錬機能を国内で実現しようとするならば、昨今の時流にはマッチするし、当然の帰結として、冷材としてのスクラップ原料のニーズが生まれます。

例のごとく、ハナシは飛躍しますが、米国が銅原料を自国内ないし、アライアンス・メンバー(重要原材料クラブのような)国での製錬に限るような動きになれば、当然、これまで中国向けに流れていた“それ”は、なかったことになります。もし、仮にそのような事態になった場合、産業の構造自体が、大きくひっくり返ります。

フリードランド氏の銅相場予想

氏は、アンカーの「15K USD 超えますか?」の煽りに対し、「それ以上かもな!」と応えるわけです。また、比喩として「今のうちに、銅の地金をレンガに見立てて、家でもつくっておけ」とも言うんですね。それに続くかたちで、「気付いた頃(2030年)には、それがランボルギーニにでも化けてるかもしらん!」と嘯くわけです。そして、最後に氏は、「ドルで考えないほうがいい。ドルの価値は既に毀損している。政府は、どうせリセッションを演出するだろうけど、それが終わったら、俺らの時代だゼ、ベイベー」と結びます。

このオヤジ、ワイルドだろぉ。

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