9/18/2020

中国主導のアフリカ銅山開発は、順調なようです

既に、なんべんも述べてきたことですが、「今の(スクラップが、“今までに比べて”売りづらい)状況は、異常」なんだと思います。そして、率直なところ、「どげんかせんといかん」と末端がわめいたところで、現状は何も変わらないわけです。お空の高い高い、酸素の薄い高貴なトコロでは、もう既に、あらゆる業界の“青写真”を描き切っているわけです。よほどの天変地異さえなければ、この“方針”は、不可侵であり、変更は不可能なわけです。当然のごとく、当スクラップ業界においても。

いやあ、お前さあ。俺も、都市伝説好きだから、多少の飛躍したハナシは許せるけれど、金持ちがスクラップ業界?まさか、気にも留めてないでしょう。

そのようにお叱りを受けることを百も承知で、パキッと正気で言わせてもらいますが、「今、オカミは、金属スクラップ並びに現物ベースメタルに相当入れ込んでいる」はずです。だって、儲かるじゃないですか。たとえ、利益率が数パーセントであろうとも、運用する金額が大きければ、利益も必然と大きくなる。そして、なんと言っても、色んな意味で底堅く“不明瞭”な取引が、公然と行える魅力は、とても大きいですよね。

じゃあ、その“不明瞭さ”って、なんなのかといえば、まあ、その辺りは、ここで触れるべきじゃないので、自粛しておきます。ひとつ言えるのは、金属くずは、物理的に動かせば動かすほど、原理上は“目減り”するということです。そして、各地域でそれぞれの独自規格(解釈)の違いがあるということです。巷のスクラップ問屋の重鎮に言わせると、「スクラップに基準はない」だそうですが、筆者はそのように考えておりません。

まあ、確かに、「所詮、スクラップはスクラップ」なのかもしれませんが、それじゃあ、「ただのクズ屋どまり」ですよね。それは、単に、自分のところの会社が、買主の求めている品質に対して、真摯に向き合えないことの証左であり、言い訳でしかありません。「積んでおけば、誰かが値をつけてくれる時代」は、しばらくお休みです。

中国のアフリカ大陸における“投資”

さて、ハナシは、アフリカの銅山プロジェクトに移ります。かつて、当ブログにて、コンゴ民主共和国(DRP)にて、Kamoa-Kakulaプロジェクトという“大きなヤマ”が動いているということについて言及しました。特筆すべき点は、主だった資本が、中国企業であるということです。また、ご存じの通り、DRPは、米国金融規制改革法(ドッド・フランク法)の影響下にある、紛争鉱物(Conflict Minerals)の“名産地”であります。

直近の当該銅山の状況はと言いますと、下記の通りでございます。

参照:Minigweekly.com "Ivanhoe to outline plans for ‘much larger’ scale Kamoa-Kakula"

カナダの鉱山開発会社であるIvanhoe Minesは来月、コンゴ民主共和国(DRC)のKamoa-Kakula銅プロジェクトを「はるかに大規模」に開発する可能性を強調した調査結果を発表する予定だ。(原文

これは、「どこそこの国は良いけど、どこそこの国は悪い」といった二元論的なハナシではありません。人生ゲームでも、モノポリーでもいいですが、これは、資本家の陣取りゲームであり、早いモン勝ちの戦(いくさ)であります。

そして、かつてのポスト(『アフリカで花開く一帯一路』)をご覧になっていただければ、わかるかと思いますが、その当時(2019年10月22日)、このヤマを調べたときに目についたのは、オペレーションの採算ラインが、たしか3.1セント/ポンド前後だったと記憶しています。

最近、理由はよくわかりませんが、銅相場は、「まだ伸びる」みたいな言質が巷(英文メディアを筆頭に)では散見されますので、もしやのもしやですが、現在の相場水準が、今後もダラダラと続く可能性も大いにあるのかもしれません。ちなみに、当時のLME相場は、5,840ドル/トンだったそうです。今後、日本国内で銅スクラップ相場が再度崩れる時は、為替の異変かもしれませんね。実際に、足元では、ドルに対して中国元が高くなっており、大陸の鉱物・スクラップバイヤーにとっては、ドル決済の商品は、割安に映っているわけです。つまり、「やりやすい」わけです。たぶん。

いずれにせよ、もはや、このシャブシャブ相場では、需給だのなんだのといったハナシは、蚊帳の外。先に“ヨレた”人が負けなんですよ。はったりのはったりの上で、バッキバキの尖った神経で、いかに化かしあうか。もう、皆さん、薄々感づいているかと思いますが、「世界中のみんなが、疲弊している」わけでして、「みんな、揃いに揃って、超絶機嫌が悪い」わけです。こういった状況下では、何が起きるのかさえ、見当もつきません。まさに、「カミのみぞ知る」ということです。




Kamoa-Kakulaプロジェクトの展望

Miningweekly.comの記事は、このように続きます。

カクラの開発作業は現在進行中で、銅精鉱の生産開始は 2021 年の第 3 四半期を予定しています。カクラは世界最高水準の大規模銅鉱山になると予想されており、操業開始から 5 年間の平均フィードグレードは 6%以上と推定され、年間 380 万トンの初期採掘量が見込まれています。
アイバンホーのロバート・フリードランド共同議長は、「主要なグリーンメタルの不足が深刻化している」と述べ、そのためにはDRCが果たすべき重要な役割があると考えています。フリードランドは今週、中国非鉄金属鉱業(CNMC)との戦略的パートナーシップを発表し、「コンゴ民主共和国をはじめ、アフリカ全土には、大規模な新規高品位鉱物の発見に向けて、この地球上で最も優れた潜在力がある」と述べました。IvanhoeとCNMCは、コルウェジ近郊のルアラバ銅製錬所を所有し、最近デジワ銅・コバルト鉱山の操業を開始したばかりで、アフリカでの機会を共同で探索・開発していきます。(原文

こういったハナシを見聞きすると、発想が稚拙かもしれませんが、このように思います。「ああ、中国は世界各国での都市鉱山開発から手を引いたんだな」と。世界の鉱物利権の構造が大きく変わっている(原油を筆頭に)中で、自らの手を汚してまで、他人の汚れ仕事を請け負うことの「割の悪さ」を実感したんでしょう。そして、ふと周りを見渡せば、そこにジャブジャブのカネと広い庭が目に入るわけです。つまり、大陸における真の意味での「踊り場からの脱却」は、「ゴミを輸入しない」とか、「原料が欲しい」とか、そういった類いのチマチマしたスケールの小さいステップではなく、もっと巨大な“なにか”の創造にあったのではないか、そのように考えるのです。

毎度のごとく、手前味噌で恐縮ですが、2017年12月17日、筆者は、『踊り場からの脱却』というポストをしています。

中国の“ヤバさ”というのは、一見荒々しい無謀な施策でありながらも、それが実際に将来のための荒療治であるということ。多少の痛みがあろうとも、今後必ず達成されるべき方向には、着実に進んでいる。
勿論、大義名分として、環境規制に引っかかるから品位の低いスクラップを輸入するのはやめましょうといったハナシになるのでしょうが、実際には既定路線(大綱)を真っ直ぐ突き進むと、産業構造の転換やら、生産技術の飛躍やら、製品品質の向上などの必達目標が掲げられていて、それらを達成していくために、もう少し品位の高いもの、良いものを手に入れて、どうにかこうにか使いこなす術を身につけていきましょうねといった、至極自然な流れの一環として、現在のような変革のタイミングがやってきたのだと思います。

この当時、筆者は、完全には理解できていなかったわけです。中国共産党が描く、壮大な鉱物施策の青写真を。答えは、明確になりましたが、要は「新たな利権の創造」が、彼らの目指す次の“らせん階段”であります。これに対して、米国は一生懸命、火消しというか、「邪魔する」ことに躍起になっているわけです。現在、ハイテク産業で起こっている帝国対帝国の争いは、すべてこの“流れ”に沿って行われているものと理解しています。

翻って、当業界における米国の“やっかみ”は、どのように進展するのでしょうか。手始めは、冒頭のハナシに繋がりますが、色んな難癖をつけて、“コンフリクト・ミネラル”を原料とした製品を徹底的に排除しますよね。人身売買や、労働環境、民族問題なんかをちらつかせながら。問題のある国々への金融制裁も強化するのでしょうか。商品の決済に難儀するようなことがあれば、貿易にも影響が出ますね。

そうなると、中国としては、「ここは、俺の庭だぞ」とやり返しますよね。米国が、カネのことでゴチャゴチャ言うんであれば、「じゃあ、ドル決済をやめて、デジタル人民元で済ませる」だとか、「もういいよ。お前んとこの国債売っちゃうよ」なんて暴挙にも出ることができます。もっと、現実的なハナシをすれば、「お前らが一生懸命つくった、あの、なんだっけ?Zorba?買ってあげないよ」と言い切ってしまえば、米国は路頭に迷うしかないわけです。長い目で俯瞰したときに、どちらが優勢なのかということは、明確であります。

以上、みちるリソースの「あしたの日記」でした。

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9/04/2020

言ったことは、具現化せんといかん。今後の金属原料の未来について、熱く語ります。

最近、小学校低学年の娘に、ある本を読み聞かせています。それは、『はれときどきぶた』シリーズです。主人公、畠山則安くんが大事にしている日記が、母親に盗み見られる場面を起点として、この物語は始まります。彼は、「あしたのにっき」を創作し、"あり得ないこと"が次々と現実のものとなるといった筋書きです。

この"あり得なさ"が、小学生の心をくすぐるようです。親心としては、「何事にも遊び心を持ってほしい」だとか、「口にしたことは、現実となることもある」ということを感じ取ってほしいなあと思うわけです。

毎度、枕が長くなってしまって、大変恐縮ではございますが、肝心なトコロは、「口にしたことを、現実(具現)にする」ということです。

また、お前は、相場が上がった銅に美辞麗句を添えて、「モーターが欲しい」だの「ミックスでも良いよ」と嘯き、相場が下がれば、「中国、もう買えナイね」などと開き直る、謎のスクラップ・ディーラーの悪口を言うつもりかと、お叱りを受けそうですが、そうではありません。

ここに、大変興味深い発表がございます。

参照:"Scholz to enter New Market in China" - Scholz Recycling Official Website

The German-based Scholz Recycling Group is heading to expand its recycling business in China with the world’s largest aluminum producer Weiqiao. On 9th June 2020 both companies have outlined a project to build a recycling industrial park in Shandong Province.
ドイツに本社を置くScholz Recycling Groupは、世界最大のアルミニウムメーカーであるWeiqiaoと共に、中国でのリサイクル事業の拡大を目指している。2020年6月9日、両社は山東省にリサイクル工業団地を建設するプロジェクトの概要を発表しました。

翻訳:DeepL

わざわざ輸入しなくても、国内でやれるから

要は、「ドイツの大手リサイクラーが、中国国内でELV事業並びに、再生部品事業に参画しますよ」ということです。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、Scholzは、'16年にChiho Environmental Groupという香港資本に買収されています。(ちなみに、Chihoは、米国でも現地のリサイクラーも買収しています。)もしかしたら、既に欧州なり北米から、中国大陸でリサイクルのオペレーションを開始した企業もあるのかもしれません。新しい"動き"ではないのかもしれない。

しかしながら、個人的には、この"動き"にとても注目をしています。ちょうど'16年、筆者は欧州リサイクル事情を学ぶため、各地を行脚していました。その際、ドイツのリサイクラー勢力図の一端を、この目でみる機会を得たのです。個人的な思い入れがある。そして、現地でヒアリングを重ねているうちに、「近いうちに、業界に"地殻変動"が起きる」と感じ取ったわけです。だからこそ、今後、どのように運営されていくのかが、大変気になるのです。

これまで、散々言ってきたことですが、中国は本気なんですよね。虎視眈々と世界情勢を見下し、威風堂々と"次の一手"を打つ。準備は、相当前から始まっていたのです。もはや、バクテリアを飲み込んだアメーバが、吸収したバクテリアから特殊な能力を獲得する。それに似たダイナミズムが、当業界を揺るがしているわけです。

前回のポスト『中国向け金属“原料”貿易は、もはやものづくり』でも言及しましたが、人伝いで、得体の知れない"廃棄物"を集めて、トンチントンチン汗水垂らして"原料"を回収する時代に終止符を打ったわけです。中国自身が。それは、環境のためなのかもしれないし、税金をきちんと徴収するためなのかもしれない。もしくは、過剰なミドルマン(仲介者)利権の"リセット"なのかもしれないし、新たな"モノづくり大国"を目指す上で、この路線は不可避なのかもしれない。

いずれにしても、欧州のリサイクル"オートメーション"技術をもって、各種金属原料の"効率回収"を実現させることに、微塵たりとも揺るぎはないわけです。筆者の考えでは、おそらく、今は「国内の幹を育てるフェーズ」にあるんです。最終的には、中国共産党資本のリサイクリング・ラインが、世界各地で稼働しているはずでしょうから、いずれ「海外に鉢植えするフェーズ」が到来するんでしょう。(日本国内では、既にその"パイロット版"が稼働している?)

どうやったら儲かるか、全部知ってるよ

中国は、アルミや銅を筆頭とした有価物の回収(歩留まり)率の最大化、新たな有価物の創出、低品位貴金属"廃棄物"の回収を通して、「絶対に儲かるビジネス」を既に具現化しています。ただ、「同国のリサイクル業における"王道"は、絶対的に属人的である」ということは、否定できないと思います。そこで、属人性を排除して、スケーラビリティ(拡張可能性)を研ぎ澄ませる必要性が生まれたのです。

ある日、金属スクラップ再生業における、酸いも甘いも徹頭徹尾、知り尽くした集団が、「もう、人海戦術では、やっていけない(=長くは続かない)」ということに気づきました。そして、「そうだ。うちも、やり方を変えよう」と本腰を入れた瞬間が、まさに数年前の状況(=「中国、雑品やめるってよ」説が流布し始めた頃)であると考えています。

結局のところ、「四の五の言わずにやれる」のは、機械しかないわけです。機械は、嘘をつかない。技術を囲わない。だから、機械化を進めた。その結果として、欧州製の機械によく似た、中華式のナゲット加工機が、世界各地で導入されました。当業界の周縁部では、みんな、見よう見まねで、とにかく「電線の皮を剥いたモノ」をつくることに躍起になった。雑品は、よくわからないから、とにかく人件費の安い国で、中国式の解体手法で、中国基準の“原料”をつくることに心血を注いだ。

そして、中国は、この騒動(=「中国、雑品やめるからな!」)を通して、海外から“原料”を調達する術を確立したのです。モノづくりにおける王道でいうところの「調達リスクのヘッジ」であります。BCP的観点では、仕入れ先を複数に分散させること、相場のリスク、地政学上のリスクは、徹底的に矮小化させるべきと謳われています。また、仮に、今後、第三国でのモノづくりが進行すれば、いわゆる"現地調達"が可能となる。もはや、「共産党帝国の枠組みの中にいれば、世界のどこにいても、モノづくりができる」と言っても過言ではない。つまり、一帯一路構想のレールの上で、見事な大輪を咲かせるための準備の一環なのです。

コアと周縁部がみている思想は違う

例のごとく、ハナシが飛躍しすぎて、収拾がつかなくなってきました。(そろそろ、お決まりのだらだらエンディングで締めくくらせていただきます。)まあ、一連の動きを端的に表すと、この一言に集約できるかと思います。それは、なにかというと、「政治が、リサイクル業における利益の最大化を図っている」ということです。そして、実際には、構想を練るだけでなく、今まで野放しにしていた“利益の源泉”を政府が管理しようとしています。これまで、「断続的に複雑に“ゆるく”」繋がっていたリサイクルの輪を、半ば強制的に集約して、それぞれの“つまらない思惑”を排除しちゃうわけです。(いつもの通り、"都市伝説の香り"が漂ってまいりました。)恐ろしい世の中でしょうか。いえ、これも既定路線なのです。

以上、筆者の描く「あしたのにっき」でしたが、リアリティありましたでしょうか。(無責任)

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