3/23/2020

リサイクル業界って、いびつで不均衡

「来期は、増産予定なんで、購買数量を増やせる"かも"しれません。また、そのときには、御社にご協力いただきたいと思います。」

あれから、どれくらいの月日が経ったのでしょうか。実際に、我々の業界のなかに「メーカーへのスクラップ原料の"増枠"を達成した」ないし、「在庫が適正水準で推移している」という会社さんはありますでしょうか。市中一般でも、「仕入れも販売も、全然問題ないよ」といった風情の業者さんは、ないと思います。それだけ、商売を行う環境として適正でない状態、逼迫した状況が続いているのだと認識しています。

巷では、今般のウィルス騒動が、どこそこの国から持ち込まれただとか、いや、そうじゃなくて、もともと、あの国の研究所のなかにあったものが、何者かによって、外部に持ち出されたのだなどと、色んな情報が飛び交っています。こういった類の話は、要は「外交上の駆け引きのツール」ですから、最終的には、"原因"というものは、いかようにも改変されるものです。

誰がトランプ大統領を予想したか

これまでにも、散々申し上げていることですが、「我々はポスト・トゥルースの時代に生かされている」ということでして。ほんの数十年前の、いわゆる"識者"の方々に、「近い将来、ドナルド・トランプさんが大統領になりますよ」などと申し上げたときに、彼らは一体どのような反応を示すでしょうか。まともに取り合ってくれることはないでしょう。それぐらい、我々の生きている世界というのは、予測が難しく脆弱であり、そうでありがらも、ある時分においては、非常に強固な塊にもなり得るのだと思うのです。

本来であれば、「なにが、今回のウィルス騒動の原因なのか」と問う場合、決して「誰が」で始めるべきでないし、憶測で物を言うことは、全くの意味をなしません。極論を言ってしまえば、「自分のせい」なのです。

どこに行っても、安くて美味しいものが食べられることに幸せを見出し、電話一つでなに不自由ない生活を送れることにあぐらをかいている。自分が自由気ままに海外旅行できているのに、「あの国の人たちはダメだ」だとか、「だから、あのとき、封鎖しておけばよかったんだ」などと嘯く。それは、感情を抜きにしたら、「フェアではない」のです。グローバル社会においては。かつて、一世風靡した「地球はみんな平等」だとか、「地球はひとつしかないんだから、みんな、エコロジーに生きようよ」っていう思想は、そもそもどこかに無理があったのかもしれない。ものすごく、ユートピア的な発想であり、もしかしたら、究極のエゴイズムだったのかもしれない。

スクリーンのなかの現実

要は、これまで「地球のみんなで仲良く、ひとつの世界をつくろうよ」と楽観的に考え、その負の側面をないものとし、それに迎合していた我々に落ち度があったわけです。何年も前から、「パンデミックが来る」と言われていましたが、誰もその恐怖を日常に落とし込むことなどせず、その存在を一種のホラームービーのように扱っていました。四角い画面に投影された"非日常"の世界が、まさか自分の世界と交差するとは思いもしなかったわけです。

我々の業界においても、「うわ、中国、雑品やめるってよ」といった焦りから、「まあ、どうにかなるっしょ」といった流れがあり、「あのさ、マレーシアがなんとかしてくれるみたい」といった安堵感が、なんとなく、業界人の懐を温めていたわけです。しかしながら、まさかの「やべえ、どこに輸出するとか、そんな話以前に、経済がやばい」といった事態にまで発展してしまった。ここまでくると、既存のフレームワークの中では、打開策は"梨の礫"となります。

枠に囚われない

トランプさんが大統領になったことを未だに信じられないと思う人間がいる一方で、サンダースさんが大統領になることを応援する人がいることを信じられないと考える人間もいます。結局は、「我々は良くて、誰それは悪い(=二項対立)」という、全く同じフレームワークの中で生きているに過ぎないということです。それが、資本主義なり、民主主義の根本を成す"崇高な"考えなのだと思います。

一方で、結局のところ、「トランプもサンダースも、"同じ穴のムジナ"であって、やることといったら、彼らの支持母体の意向を粛々と大衆に押し付けること」だと考える人もいるかもしれません。オバマ政権が、高らかに喧伝した"We can change"運動の"WE"とは、果たして誰を指していたのか。なにがどのように変わったのか。彼が大統領の座におさまっていたときに、何発のミサイルを"敵国"に打ち込んだのか。そのようなことを考えれば、「誰が、なにをやろうが、結局なにも変わらない」と感じざるを得ません。

サヨナラいつか

今後、我々の地球、経済、業界にも、さらなる荒波が押し寄せることが予想されます。この、大きな大きなパラダイムシフト("潮目"と表す以上のインパクトがあると考えています)の波に、今までと同じ発想の仕方、生き方で対応できるのでしょうか。我々の業界のみにフォーカスした超ミクロ視点で俯瞰した場合、「物量至上主義」だとか、「商流至上主義」、「長老崇拝主義」って、今後も"サステイナブル(=持続可能性のある)"なのでしょうか。

いつか、売れなくなりますよね。いつか、相場が悪くなりますよね。いつか、あの人もダメになりますよね。いつかのいつかが、まさに今の現状ですよね。

この乱世の渦中、自分だったらなにができるか、こうやったら、産業自体がもっともっと盛り上がるんじゃないか、つまらないことでもコツコツ積み上げることで、商売の芽が、未来がつくれるんじゃないか。真剣に、そのように考えています。もっと言ってしまえば、「ゴミ(ゼロ)から資源(イチ)を生み出すことってセクシー」だと思います。絵空ごとの"エゴ"ではなく、お金になる"ゼロイチ"をつりたいです。そのためには、上向きにグルグル回りながら、利益を積み上げてくれる(=スパイラルアップ)"仕組み"づくりが必要です。仲間が必要です。フレームワークの改造が必要です。がんばります。真の意味での"まん丸リサイクル経済(=サーキュラー・エコノミー)"実現に向けて。

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3/17/2020

血なまぐさい様相を呈してまいりましたが、"カネ"より"ゲンブツ"を抱えていきたいですね

ちょうど、パラジウムが下げ始めたときでしょうか。当ブログをご覧いただいている読者様の流入パターンに異変がありました。突如、過去のパラジウム関連ポストに対して、アクセスが増えたのであります。特に顕著であったのは、『ねえ、パラジウムって、いつ"サゲ"るのさ』というポストでありました。筆者としましても、このタイミングで暴落することは一切予期せぬ事態であり、ここまで下がってしまうと、相当色んな意味で"やりにくい"状況になりつつあります。

毎度、手前味噌で申し訳ないですが、いつもの伏線回収に取り掛かりたいと思います。

なんだか、先行き不安なようで、けっこう、為政者の思い通りに

当該ポストのなかで、筆者は、「地政学上のテンションに翻弄されたアゲ」が今後、進行するのではないかと推論しました。

南アフリカやロシアが主の原産であるパラジウムにとって、米露関係の良し悪しは、重大事項であります。穿った見方をしてしまえば、ここまで同貴金属の相場が高騰していると言うことは、中東利権のコントロールに難儀しているのか、ブレグジット後のランディングが、相当ハードになるものと捉えているのか、プーチン体制の雲行きが怪しくなっているのか。
  1. 中東利権のコントロールに難儀している
  2. ブレグジット後のランディングが、相当ハードになるものと捉えている
  3. プーチン体制の雲行きが怪しくなっている

立ち止まって、よーく考えてみた

今般のウィルス騒ぎで、上記懸案事項は、非常にクリアになったものと理解しています。

  1. 中東利権に関しては、サウジの王様が"ダダこねて"、ロシアと喧嘩中だと言われていますが、実際のところはどうなんでしょうか。筆者には、お偉方の采配で、粛々と自分のやるべきことをこなしているようにしか見えません。先行き不安や、その他先物相場への影響を鑑みると"恐い"ですけど、逆に、なんらかの確証をもって突き進んでいらっしゃるのであれば、当然のことながら、下々の人間は、ただひたすらに「成り行きを見守る」ことしかできません。
  2. ブレグジット後のランディングは、当初言われていたような大混乱には至りませんでした。というか、今般のウィルス騒動のゴタゴタのなか、「欧州経済崩壊の影響を矮小化できる」という意味では、見事なランディングをきめることができそうです。経済崩壊後の移民の流入に関しても、とりあえずは鎖国する口実(壁)ができたという事実を考えれば、彼らにとっては"ラッキー"だったのかもしれません。ただ、内部に滞留するウィルスが、どれだけ猛威を振るうのか、ということに関しては、「神のみぞ知る」ことでしょう。(そもそも、英国内を漂うコロナは、どっちの"タイプ(毒性の強弱)"のそれなのでしょうか?)
  3. プーチン体制は、盤石になったとみて間違い無いのでしょうか。よくわかりませんが、今振り返ってみると、「プーチン体制が不安定だから、パラジウム相場が不安定に上振れした」という心理ではなく、「プーチン専制が堅実に確立されていたので、パラジウム相場が堅実に上振れした」ということではないでしょうか。また、「相場を下げる必然(口実)ができたから、下げた(ショートポジションに切り替えた)」ということではないでしょうか。何べんも言いますが、テキトーです。

パラジウムは、もうオワコンですよね?とりあえず

素人には、さっぱり内情は理解できかねますが、プラチナに対する大局観としては「爆上げする要素がなくなった」ということではないでしょうか。おそらく、「産出国の既得権益層は、莫大な利益を"ドル建て"で得ている」わけです。つまり、自国通貨がいくら下がろうと、ドルが生きていれば、まあ、どうにかなるわけです。そうすると、「いや、お前はなんにもわかっちゃいない。じゃあ、ドルの価値がなくなったら、その"利益"は、どこにいくんだい」といったツッコミを受けます。筆者の妄想でしかないですが、先回のポストで言及した通り、「貴金属権益層は、既に、パラジウムと紐づいた仮想通貨を買い漁っている」んじゃないでしょうか。

触媒に関しても、つい先日、「プラチナで代替できるんじゃないか」みたいな言質がとられていました。いつものごとく脱線しますが、個人的には、未だに「宇宙空間における資源開発」が一気に加速し、「レアメタル並びにプレシャスメタル価格の安定(=超低ボラ)」が起きることを真剣に信じています。要は、現在のような、あるんだかないんだか分からない"需要"に対して、"供給"が間に合う状態です。なんだ、そんなことしたら、「貴金属生産国が必死になって止めにかかるに決まっているだろう」と仰るかもしれませんが、本当にそうでしょうか。

実際、そういうことも黎明期にはやるでしょうが、鉱業は利回りの高い"加工ビジネス"です。鉱石をキラキラの製品に仕上げる、加工業者なくしては、一切成立しません。そして、彼らが「やりたくない」と言えば供給不安になるし、需要が高ければ、必然的に相場も上がります。要は、"彼ら"をコントロールする術を獲得すれば、相場をコントロールすることも容易になるということだと思います。

よって、貴金属生産地域ならびに、秀でた精錬技術を持ち合わせた集団が、宇宙空間における"鉱業"と結びつくのは必然と言いますか、夢のある話だと思います。最終的には、宇宙空間で"ものづくり"が完結するのでしょうが、そういった技術が完成するまでは、地球上で精錬活動が必要になります。ますます、金属精錬業者ならびに金属リサイクル業者の必要性が増すものと、個人的な願望を込めつつも、そのように考えております。

参考:WIREDオンライン版『小惑星で資源を採掘、宇宙で「3Dプリント」製造する新会社

小惑星には、ニッケルやシリコンのほか、プラチナ(白金)やパラジウムなどの白金族金属をはじめとする非常に潜在的価値の高い物質と、水が存在する。水は水素と酸素に分解してロケット燃料を作ることができる
小惑星で採掘した未加工の物質から貴金属を抽出し、3Dプリンターを使って部品を作るという技術の特許をすでに取得しているという。同社は最終的には、通信衛星や地球軌道に設置する太陽光発電ステーション等を、宇宙で製作できるようにすることを目標にしている
小惑星の物質1トンは、軌道上で100万ドルの価値があると見込んでいる

3/11/2020

元米国商務省長官のリージョナリズム

もう、件(くだん)のウィルスに対して、あーだこーだ言うのは、ヤメにしたいと思います。当ブログは、「非鉄金属スクラップに対する篤い思いを伝える」ためのものです。

実体経済への影響度が深刻であること、病理的な特性が掴みにくいが故に"怖い"ということ、人間の「分からない」心理が病原体の図体を実体以上に大きくしていることは、明確です。フワフワとした「たぶん、こうだろう」的な浮いたハナシをしても、右往左往してみても、なんの対策にもならないことも、明確です。今後の金属相場の趨勢が、どのように蠢いていくのかということは、見当もつきませんが、これまで以上にボラティリティが高くなっていくのだろうということは、明確です。


さて、これまで当ブログ内では、「世界はリージョナリズムに向かうだろう」ということについて、言及してまいりました。思い起こせば、あれは、ちょうど2年前のことです。米国のリサイクル組合である、ISRIの定期コンベンションにて、元米国商務省長官Carlos Gutierrez氏が、左記のような発言をされました。

当時、「なにがリージョナリズムだよ」と訝しく思いながらも、「この人、なんか"ポジション"持っているな」と感じ、一生懸命、彼の言っていることをノートに書き殴りました。その時のフィーリングをブログにしたのが、『ジブンチの周り』に当たります。当該記事の中で、筆者はこのように、のたうち回ります。

巷で騒がれている「中国が輸入を云々」や、「マレーシアの胃袋は云々」、「韓国で解体が云々」といった話は、所詮"ネイション"ですよね。本当に、これから真剣に考えていかないといけないのは、「"ここらへん(ジブンチの周り)"で一体なにができるのか」ではないでしょうか。

さらに、畳み掛けます。

乗り越えていかないといけないのは、バーゼル法の足かせやら、税金の類でなく、発想のリミットではないでしょうか

オチは、下記の通りです。

非常に大きなコトを述べましたが、自分の行いがまったく追随しないことに冷や汗が出てまいりました。

現在も、「言ってることと、やってること」との温度差が激しいことに変わりはありません。しかしながら、「身の回りにあるもので、なんか面白いことできないかな」という感覚は、微塵も変わっておりませんし、むしろ強くなっているような気さえします。

日本時間3/11付のブルームバーグ・ポリティクスに、Gutierrez氏が出ていました。昨今のトランプ政権の対応が遅いということを中心に、「もう少し、ドラスティックな動きが必要である。仮に"やりすぎ"だとしても、やらないよりはマシ」という論調で語っていると思います。まあ、あくまでも筆者の理解です。

また、キャスターから「(氏が食品関係の会社を経営していたため)今後、食品への影響はあるか?」という質問に対し、口を濁した点。やけに、"ウィルスの検査キット"について強く発信する点等を鑑みますと、左記のなかにも、彼が今の段階で推し進めている"ポジション"と、なんらかの関係があるのではないか、そのように筆者は邪推してしまいます。

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3/06/2020

混沌とした時代ですから、なにが売れるのかわかりません

昨日は、所用で近所の駅ビルに入りました。事務作業を喫茶店の一角でやっていると、暇そうに、わけもなく、集団で、ぷらぷらと彷徨っている、スーツ姿のおじさま方が目につきました。何組も、です。これは、「おそろしいことになったな」と思いました。

なにかを扇動するような意図はありませんが、「サラリーマンが、やることがないのに、徒党を組んでサボっている」のです。(昼間から公然とサボってもいいのは、筆者のような個人事業者だけだったはずです。)今のうちは、会社側も「まあ、しょうがない」と見放しているのだろうし、管理のしようもないので、致し方ないことは自明であります。しかしながら、「やべ、お役所に申請できる"休業補償"の枠が足りねえ!辻褄が合わねえ!」となったときに、果たして企業側が、現在のような野放図を容認できますでしょうか。(今後、おそらく「架空"休業補償"請求をした、某県の某社」みたいなニュースが出てくることでしょう。)


閑話休題。今回は、いつもとは趣向を変えてみようと思います。


マハティールさん、あの人に似てるよな

マレーシアのマハティール首相でありますが、この方、周知の通り、既に90歳を超えております。この歳で、この太々しい顔といいますか、「俺、まだまだ現役だからな」という、いわゆる"半端ない"オーラ、すごいですよね。

上記、ツイートに関しましては、政治の門外漢である筆者にとっては、知ったこっちゃないですが、「今後の東南アジア政経事情は、相当荒れるのではないか」ということを、恐らく示唆しているものと思われます。(隣国のタイ王国におかれましても、また一味違った分野で、きな臭い動きが散見されます。今後、ますます既得権益層における連立構造の瓦解、そこから生まれる民衆の分断、宗教対立の激化など、複雑な問題がさらなる複雑な要素を孕み、左記の通り、混迷を極めるものと考えています。)

マハティールさんの顔を見ていると、Netflixでクラシック作品として崇められる”Breaking Bad”に登場した、麻薬王ことグスタボ・フリングのことを思い出してしまいますね。普段は、フライドチキンのチェーン店を営む店主が、実は、麻薬王だった、という役柄なんです。ご存知の方も多いでしょう。

グスタボさんにみる風林火山

劇中のグスタボさんのすごいところは、「マハティールに似ている」という点でも、「莫大な財産を築いた」という点でもありません。個人的にインスパイアされたのは、「圧倒的に巨大かつ不可視な"帝国"をつくり、それを安定的に運営する術を知っている」という点です。グローバルだの、大国とビジネスをしてますだの、"B2B"だの、しのごの言わず、「リスクを矮小化すれば、必ず大きな利益を生む商売」に対して、冷徹かつ大胆に対峙する姿は、観る者のハートを鷲掴みにします。そして、商売人としての姿勢が潔い。決して、"情"で動かず、己の"感(カン)"で動く。

甲州商人であれば、孫子の書かれた「風林火山」に通じるものとも感じ取ってしまう。

故に其の疾きこと風の如く、其の徐(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如く

知りがたきこと陰の如く、動くこと雷霆(らいてい)の如し、郷を掠めて衆を分かち、地を廓めて利を分かち、権を懸けて動く。

参考:『甲府市/「風林火山」には続きがある!?

実際に、前半部分では、戦(いくさ)におけるスタンス、後半部分では、「勝利をおさめたあとの真髄」が書かれているものと理解しています。

なにを、どうしたら儲かるようになるのか

またもや、脱線してしまいました。筆者が言いたかったことは、これです。「リスクを矮小化すれば、必ず大きな利益を生む商売」とは、我々の業界、つまりは非鉄金属スクラップ業界において、なにが当てはまるのかということです。

LVMHグループに代表される、いわゆる"ブランド・ビジネス"は、「人間の所有欲をほどほどに満たす」ことに儲けの源泉があると考えています。(全部満たしてしまえば、そこで消費は完結してしまうからです。「もっと良いもの、もっと凄いものがウチにはあるんだよ」ということを消費者に提案し続けねばならないということだと思います。)言い換えれば、「"イメージ"が毀損するようなリスクを徹底的に排除しなければならない」ということでしょう。

実際に、グループの頭がこう述べています。

長期的なビジョンに基づく私たちの企業モデルは、傘下メゾンの伝統を尊重するとともに、比類のないクリエイションとクオリティを追求します。こうした姿勢が、グループの成功を支える原動力であり、未来のさらなる成長を約束する土台でもあります

ビジネスはシステム

劇中のグスタボが、表の顔として経営していた飲食チェーンは、どうでしょうか。もしかしたら、彼が経営していた"麻薬チェーン"と比較した際に、共通項がいっぱい出てくるかもしれません。というのも、フランチャイズ経営の"旨味"って、実のところ、よくわかりませんが、「食べ物を売って出る利益」なんかよりも、「その食べ物を売るためのシステム」の方が、よっぽど大事だと捉えているんですが、間違っていないでしょうか。コンビニエンスストアに置き換えても、同じことが言えると思います。

これ以上、深掘りすると、またもやとんでもない方向に話が進みそうなので、遠慮しておきますが、要は「うちの業界も、もう少し"システマイズ"してみる価値があるんじゃないか」ということです。現状は、非鉄金属といえども、腐る程種類がありますし、業種もありますが、結局のところ、いわゆる"上物"に関しては、「他より高い値段出したモン勝ち」ですよね。商売なんで、当然のごとく、「一円でも高い方に売る」のが筋であることに間違いはありません。ただ、ひとつ言えるのは、そこに"特殊性"はないです。

言い換えれば、「アンタんとこと商売する理由は、高く買ってくれるから」ということになります。だから、この業界における参入障壁は低いままで、際限のない消耗戦を繰り広げる必要性に苛まれる環境に置かれてしまったのだと考えています。資本の流動制が著しく低下した今、「あんだけ値段を釣り上げておいて、なんだよ。ダメになったら買えません。そんなバカな話があるかよ」と嘯いても、誰も責任は取ってくれないのです。

良し悪しを決めるのは誰か

どうでしょうか。我々も、「比類のないクリエイションとクオリティを追求」してみませんか。需要家が、ヨダレを垂らして「売ってくれませんか」と言わしめるほどの"原料"をつくるのです。所詮、品質要求事項(期待値)なんて、「お客さんごとに違う」わけです。死ぬ気で、完璧なもの、ダストが何%で、どうのこうのをつくりましょう、という話ではありません。抽象画の巨匠は、抽象画が好きでたまらない人にとっての巨匠たり得ますが、普通の人からみたら、ただのお絵かきにしか見えないかもしれません。

混沌とした時代ですから、なにが売れるのかわかりません。誰もが、「いやあ、こんなスクラップのなかのスクラップだろ。もう、ゴミと一緒じゃん。こんなもん、手を出さない方がいいよ」なんて思い込んでいるものが、いつか日の目を見る時代が訪れるかもしれません。圧倒的な効率と、圧倒的な品質があれば、需要家が欲しがる商材に化けるかもしれない。そんな夢のある仕事をしていきたいと、真剣に思っています。

3/03/2020

パラジウムと極東物流政策に関連はあるのか

ドーン!とくると思っていましたが、きませんでしたね。もう、なにが織り込み済みで、なにが思惑筋なのか、さっぱりわかりません。金属相場のことです。どうでもいいですね。

もはや、ここまで混沌としてくると、相場と実体経済とのリンクが薄れてきます。人と人との関係性も薄れてきます。疑心暗鬼になります。駆け引きが雑になります。さらに、信用不安が信用不安を呼びます。富める人々は、信用スコアの低い人間から、バッサバッサと斬りつけていきます。金払いの悪い人、品質の悪いものを売りつける人、時間通りに来ない人。

中国では、今般のウィルス騒ぎのなか、スマートフォンに格納された行動履歴をもとに、「この人は、安全だろう」とか「この人に近づくと、なんか感染(うつ)るよ」みたいな評価がされるシステムが確立され、実際に運用されているとか。教育や労働に関しても、リモートでの対応を進めるべく、次々に新技術や事業が起こっているという。あえて、我が国での進捗状況等に触れるつもりはございません。商魂の違いは、まざまざと有事の際に表れる。そういうことではないでしょうか。

実際のところ、金とパラジウムって、どっちが価値あるのさ

昨今、筆者が注目しているのは、ロシア事情でございます。

ここ数ヶ月の間、パラジウムの動きは、"ものすごく"不自然でした。確かに、環境規制が厳格化されたこと、今後の内燃機関需要減に伴う、瞬発的な触媒需要の逼迫等、「まあ、言われてみれば」的な納得感はあるんですが、「いや、それさ、そういうけど、それは行き過ぎじゃね?」的なインスティンクトも働くわけです。もっと言ってしまえば、「あの、銅の落ち着きぶり」ってなんなんでしょうか。今般のウィルス騒ぎで、コテンパンに打ちのめされたかのように振る舞いながらも、毅然とファイティング・ポーズをキメて、戦い続けるその雄姿。表現が稚拙で恐縮ですが、なんかアイツ、イかれてるよな。

シベリア経由で持っていけばいいんだよ

ここからは、スクラップ業界に多少なりとも影響のある、地政学上のトレンドに関して言及したいと思います。昨今の"温暖化"(地球の長い生涯のなかでは、大したことはないんでしょうが)が進む中、「北極の氷ガー」ということで、北極海航路が注目を浴びています。というか、こういう流れで進めたくて、ワカチコしていた国はひとつではないと思います。そして、例のごとく、アメリカ・コーポレーション傘下企業が、「お願いだから、北極海を荒らさないで!」と涙ながらに語っています。

なんで、この話がスクラップに結びつくかというと、「欧州から極東までの船足が短くなる(早く着く)」し、「治安の安定しない地域を通る必要がない(余計な"袖の下コスト"が減る)」ということになりまして、我々の所属する静脈産業におきましても、流動性が増すわけです。例えば、通関処理も含め、ドアツードアで40日以上かかっていた物流が、20日前後に短縮されたらどうでしょう。一般消費者の感覚に置き換えてもいいかもしれません。アマゾンのデリバリーが、今まで4日だったのに2日に短縮されたら、ずいぶんと違いますよね。

実際に、趣向は違いますが、EU加盟の某国は既にやっています。なにをやっているのかというと、「電気銅を列車で中国まで運ぶ」という荒業です。実際にやっている人から聞いた話なので、間違いはないと思います。その人によると、いわゆるシベリア鉄道の"特別車両"で、一気にドカンと運んでしまうそうです。軽くさらっと言ってしまいますが、「その中に、貴金属インゴット満載の車両がひとつぐらい紛れてても、わかんないすよね」ということです。足元は、おそらく銅鉱石なり、銅精鉱の車列に混じって、輸出しているのでしょう。また、帰りの便には、重工業向けの機械類を積んだコンテナが満載で…あとは、ご想像の通りです。

マレーシアに依存するのって怖くないの

要は、北極海航路が使えない状況下においても、欧州から極東への(逆も然り)ロジスティックは、我々が思う以上に盤石で、新たな動きが活発化しているということだと思います。また、いつものように飛躍したハナシを突然ぶつけますが、今後、スクラップの仕向地は、インドネシアでもなく、香港でもなく、パキスタンでもなく、我々が聞いたこともないような欧州の辺鄙な街に置き換わる可能性も示しています

そんなことを言っても、「中国人の熟練工ガー」という、昔ながらの発想もあるかと思いますが、どこの国、地域に行っても器用な人は、必ずいます。それに、人件費の安い国々では、もしかしたら、既に中国のそれに匹敵するほどの解体能力を持ち合わせているかもしれない。ま、妄想でしかありませんが。究極のハナシをしてしまえば、仮にでも、公然と"オフブラック"なことをやってくれるところがあれば、中国の解体工の技術がどうのこうのと能書き垂れる必要はないわけです。(あー言っちゃった。)

もっと突っ込んだハナシをしてしまえば、「うちではダメだけど、あそこでは全然OK(ブラックではない)」なこともあるわけです。例えば、「うちは、こんな樹脂の多いスクラップはやらないよ!」と言い張るところがあっても、一方で「あー、樹脂?これぐらいだったら、うちで手をかけて使いますよ。銀もとれるし」といったように、受け取られ方が違うことも多々あるわけです。人ぞれぞれ性癖が違うように、需要家だって、それぞれに得意なものがあってもおかしくないですよね。

ま、これぐらいでいいっしょ

ここまで言っても、「お前は仕入れのことを考えていない。通り相場ってものがあるだろうが。それに、地球の反対側に送るのと、隣の国に送るのじゃあ、コストが全然違う」と納得できない方がいらっしゃることは、百も承知です。でも、その考え方って、「集めればジャンジャン売れる時期に、特定の地域向けにドンドコ送る」という前提ですよね。また、そもそもの"通り相場"ってなんなんでしょうか。それは単に、得体の知れない"需要"に対して、「なんとなくこれぐらいでいいだろう」と誰かが決めた"イメージ"でしかないと思います。もし、それが本当に実体のない"イメージ"に過ぎないのであれば、いとも簡単にその"威力"は無かったことにされてしまいます。

これから、7月の新規制適用に向け、大陸向けの"相場感"がみえてくると思います。今のところは、明瞭なビジョンはみえてきていません。ただ、ひとつ明確なのは、「基準がどうのこうの、あれダメ、これダメ。これはイイけど安いよ」と続けていると、売る側はイヤになっちゃうわけです。だって、「今まで、喜んで"なんでも"買ってくれた」わけですから。だったら、売り手としては「仕入れ値を下げて、手をかけてでもキレイなものを作り込んで、妥当な値段で買ってくれるところに売る」という流れに持っていくしかなくなるわけです。もはや、"巨大胃袋"と揶揄された中国が、スクラップの仕入れに対して、そのようなスタンスであるわけですから、至極当然の流れなわけです。

果たして、今は買い手市場なのか

そうなんですよね。結局のところは、販管費がどれだけかかろうと、仕入れが安くなれば、その分の利幅は確保できてしまう。仮に、利幅が十二分にとれるのであれば、流通量を減らしても、これまで同様やっていける可能性だってある。すごく興味深いことなんですが、筆者は、スクラップに関して、メーカー主導の完全なる"買い手市場"になると予想していたわけなんです。しかしながら、実のところは、確かにそのようでありながら、違うんですよね。

左記で言及したように、「以前より安く仕入れられる」という状況と、リサイクルできないものが国内(業者)に滞留するという事実を差し置いても、「スクラップを解体することで生まれる旨味(=付加価値)が国内(業者)に残る」という事実があれば、考えようによっては"売り手市場"になり得る。今まで、大陸に全部渡していた"旨味"を取り戻すチャンスと言っても過言ではないかも知れない。また、商流の真ん中でなんとなくぶら下がっていた業者が淘汰されていくことで、その上流と下流が適正にマージンを取ることができるようになるかもしれない。これまでの"ディストピア論者"が、"ユートピア論者"に鞍替えですかと笑われるかもしれませんが、昨今の動きは、業界全体を抜本的に変える一大事であります。

閑話休題。今しがた、「コンテナの列車輸送という"荒業"」について言及しましたが、ここに大変興味深い記事があります。

コロナウィルス:工場の稼働が落ち込む中、2月度における貨物列車利用が驚きの伸長 政府発表(Coronavirus: China reports surprising rail freight growth in February despite factory activity tumbling)

  • 幹線道路の封鎖にも拘らず、列車による輸送は通常通り行われている
  • 列車輸送全体 前年比、+4.5%の伸び
  • 全体2月出荷: 171,000貨車/日
  • うちコンテナ輸送: 約2千7百万トン / 39.5%上昇

時代が変われば、やり方も変わるということですね。


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