“サーキュラー・エコノミー”は、もはやバズワードではない。その〇の理由

はい。巷にあふれる意識高い系の釣りタイトルを使ってみました。しかしながら、今回は“釣り”でもなんでもありません。「サーキュラー・エコノミーに関する具体的な目標が、大きく掲げられましたよ」というご報告であります。

中華人民共和国国家発展改革委員会は、'21年7月28日、今後5年間の循環型経済 (Circular Economy) を促進するための新たな開発計画を発表しました。計画によると、'25年までに古紙は6,000万トン、鉄スクラップの使用量は3億2,000万トンに達し、非鉄スクラップの消費量も2,000万トンに達するとしています。資源リサイクル産業の経済規模として、5兆元(773億ドル)を見込んでいます。

参照: National Development and Reform Commission (NDRC) People’s Republic of China "News"

“非鉄スクラップ”の内訳も、他の媒体で言及されていましたので、こちらも併せて引用します。

400万トンのリサイクル銅、1,150万トンのリサイクルアルミニウム、290万トンのリサイクル鉛の目標が含まれている

参照: REUTERS "China to boost steel scrap usage by 23% in next five years"

いわゆる“大綱”が正式に発表されたわけです。つまるところ、この“定量的な指数”が明確になった以上、なにがあろうとも、この国は実現させます。多少の犠牲があろうとも、厭わないのです。なぜならば、「結果がすべて」であり、「やれて当然」なのですから。

サーキュラー・エコノミー?知ってるよ!ホントに!ホントだから

正直なところ、今まで、リサイクル関係者との対話の中で、「サーキュラー・エコノミーってさー」などといった話題を振ろうものなら、「おー、おたくは本当に意識高い!倫理観だの経済などと言っても、なかなか両立できないのが現実よね。まあ、そんなことより、今後の銅相場はどうなりますかねぇ?」といった感じに終始してしまって、盛り上がることはなかったわけです。なぜならば、「“響きだけは良い横文字をブンブン振り回したところで、日銭を稼ぐことはできない」からです。目先の「切った張った、買った売った、勝った負けた」に執着していれば、少なくとも結果は出ます。つまり、これまでの「サーキュラー・エコノミー (CE) の扱いは、“バズワード”以上でも、それ以下でもなかった」わけです。

ふんわりとした、耳障りの良い“概念”が定量性を持ち合わせたとき、さて、そこになにが生まれるのでしょうか。中国が見据える先には、当然のことながら、“世界一の座”があります。EUとの足並みを揃え、米国の資源政策を骨抜きにし、圧倒的な力で世界的な資源を牛耳る。恐らく、筆者の推測の域を出ませんが、今後も、日本はあくまでも“調整弁”的な役割を強いられるわけです。特定の地域からの供給に難儀したとき、品質に問題が起きたときのために。彼の国は、真綿で首を締めつつも、断じて殺すつもりなどありません。我々は、大国に蹂躙されているのではなく、生かされているのです。もはや、筆者は何を言いたいのでしょうね。

国民の皆さん、あなた方は今日から金属くず商です

筆者の妄想の世界は続きます。もし、CEが市民権を得た場合、どういった事態に陥るのでしょうか。つまり、「この電線、歩留まりが42%だから、〇〇円ぐらいで売れる」ということに、“フツーの人”が気付いた場合です。百歩譲って、「要らなくなった電線・ケーブルは、売る」という発想に至った場合でもいいです。値段がインターネット上を独り歩きしてしまう時代。世界中のスクラップ・ディーラーの買取単価を調べることができてしまう世の中です。消費(排出)者としては、少しでも高く売りたいという欲求に駆られるのは当然の理であります。

そうすると、「誰が見ても、“それ”だとわかるもの」の流動性は高まるし、それを取り扱う上での参入障壁は、うんと低くなります。市場は、極レッド・オーシャンになるでしょうから、中間業者の淘汰が進みます。うまみが薄くなればなるほど、大手資本は、“囲い込み”に力を入れます。(例えば、大型ショッピングモールや家電量販店等における自動買い取り機の導入や、製品買い替え時の金銭的なインセンティブの付与など。)まあ、この手の妄想話は、さんざんこれまでも繰り広げてきたわけですが。

リンク: みちるリソースのご意見番が吠える 『みちるリソースがこれまで文字によって紡いできた“幹”の部分

ここまでくると、常軌を逸していますが、“一億総金属くず商”化の社会も、あながち間違っていないわけです。方向性としては。

グレーは時代に合わない

つまり、なにが言いたいかというと、既存の“スクラップ屋”(手前含め)は、「余程のメリットを提供できなければ、仕入れが(今以上に)難しくなる」ということではないでしょうか。

ぶっちゃけたハナシ、一般論として、これまでは、札束の力業(ちからわざ)で、色んなことをうやむやにしてこれたわけです。やるか、やらないかは別として。ただ、今後、資金の動きは、オカミに掌握されます。表現が適切かどうかは、よくわかりませんが、「灰色な部分を維持することに合理性は少ないよね」ということが言えるかもしれません。これまでは、そういったことは、倫理・経済的な視点でのみ語られてきましたが、これからは、オフブラック・オア・オフホワイトの二者択一の問題になってゆきます。ますます、筆者が何を言いたいのかわかりませんね。

正直なところ、「経済活動が制限され、代謝が悪くなっているから、オールド・スクラップの発生が少ない」という現実、「法規制やスクラップを取り巻く環境が目まぐるしく変化している」がゆえの混乱、「様々な思惑が交錯する中での過当競争」は、業界を疲弊させます。なぜならば、狭い井の中で、激烈なゼロサムゲームに参加しないといけないからです。ルールも途中で変わります。参加プレイヤーの肉体的な特性、使うことのできる武器も似通っています。勝ち残るのは、図体の大きい者、“彼ら”の取り巻きです。

新たな市場をつくるということは、参加者と資金の流入を生むということ

ここまで、現実的なハナシ、悲観的なハナシをつらつらと述べてきたわけですが、ここでやや楽観的なハナシもしてみたいと思います。それは、リサイクル産業が大きな注目を浴びるチャンスを得て、新たな投資分野として、「“フツーの人”から持て囃されるんじゃないか」ということです。

正直なところ、日本における金属スクラップのそれは、殊に“斜陽産業”と呼ばずにいられないほどの凋落ぶりです。国内の原料需要もパッとせず、大きな技術革新もなく、賃金の安い集団・海外に“パイ”を奪われ、成す術なく指をくわえて「ぴえん」と泣く。それが、現在の姿です。(むしろ、そのようでありながらも、それとなくそれぞれの事業者が、ある程度の収益性を確保できていること自体に、産業構造のいびつさをまざまざと感じさせられます。)

しかしながら、ここにきて、彼の大国がファイティングポーズをきめ、世界最大の投資会社 BlackRock が、サーキュラー・エコノミー関連の投資を大々的に始めたことからも、資本家連中の気合の入れ方は尋常ではないのです。言うなれば、新たな利権創出に躍起になっている。

同社は、投資対象を3つの類型にカテゴライズしています。

  • Adopters(適応企業)…循環型の事業活動を採用し、企業価値を高めている企業
  • Beneficiaries(受益企業)…サーキュラーエコノミーの移行によって間接的にメリットがある企業
  • Enablers(支援企業)…顧客がより循環型になることを直接的な目的とした革新的なソリューションを提供する企業

ここで刮目すべき点は、「投資対象は、サイクル(円)をつくれる事業」であって、「リニア的な右から左の商売は、非対象」であると高らかに宣言しているわけではないですが、いわゆる、“トレーダー”やら“ブローカー”の類に興味はないわけです。“プロセッシング”、“マニュファクチュアリング”、“ファブリケイティング”の分野しか許されないのです。もしくは、それらを実現させる“コンサルティング”の分野です。

儲かるとか、儲からないとか、そういう次元のハナシではもはやなく

経済産業省と環境省連名の資料の中では、Enablersを「支援企業」と表現していますが、もしかしたら、「不可能を可能にする人」と訳しても面白いかもしれません。間違いなく、この3類型の中で最もクリエイティブな任務を与えられています。

同社としても、この分野は、新規性、収益性、成長性が未知数かつ、伸びしろがあるがゆえに、新たな投資対象としての注目も高いことでしょう。しかしながら、おそらく具体的な投資対象の選定に難儀されている。研究としての事例あれど、実際の事業としての成功事例が少ないからです。言い換えると、真の意味で革新性のあるアイデアを持っていれば、小規模な事業者であっても、業界の勢力図を塗り替えることができるかもしれないということです。特定の出資者に限らず、新たな利権をつくるということは、新たな投資家を生むということですから、当然のことながら、資金の流入量が増えることは容易に想像できます。

果たして、今後、日本のリサイクラー界隈に、「不可能を可能にする」新参者は現れるのでしょうか。もしくは、現状をそのまま突き進み、大手上場企業の寡占で満足してしまうのでしょうか。

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