お付き合いは、大切に(マレーシアは、スクラップ貿易に制限をかけるそうです)

ずいぶんと暖かくなりましたね。陰鬱な世相を嘲笑うかのように、桜が咲き始め、穏やかな風が頬を伝います。

先日より、遠方への営業活動を再開しました。気心の知れた方々にお会いし、昨今のリサイクル・金属原料動向に関する情報交換を行いました。やはり、血の通った“お付き合い”を実現するには、きちっと面と向かい、膝を突き合わせる必要があります。どうにかこうにか折り合いをつけ、お互いが納得した上で、取引を行う。それは、至極当然のことなのですが、昨今の“インスタントなカタログ商売”に慣れてしまうと、ついつい忘れてしまいます。

“情報化社会”などと叫ばれて久しいですが、今、巷に溢れるその“情報”とやらは、真に正しいのでしょうか。嘘か誠かも判別できないまま、「ネット上で人気だから、なんとなく」買ったり、売ったりしていないでしょうか。卑近な例で言えば、特号銅線なんかもそうです。仮に、キロ当たり900円が「ネット上での最高値」だとしたら、大勢の方が「まあ、そんなもんかね。銅も上がったし」などと捉えてしまうことでしょう。

しかしながら、過去の“料率”と比べた場合、明らかに“金属スクラップ相場”は割安だと思います。これは、銅に限らず、日本に限らず、世界的に起こっている“変化”の一部でしょう。これは、買う側が、これまで行われていたような「建値に対しての絶対的な料率」で取引しなくとも、背伸びしなくとも、「十分に買える」ということの証左であります。言い換えれば、売る側の“期待値”の水準が、「これぐらいが丁度よい」と示しているわけです。

一喜一憂と安定

ただ、今後、もし仮に、「今の相場水準が当たり前に」なったり、「スクラップ供給(発生)が、さらに先細る」ような事態に陥った場合、当然のことながら、競争が激化してゆくわけです。でも、料率はあまり改善されない。だって、買う側としたら、「先月、この値段で売ってくれたでしょ」となるからです。つまり、お互いの合意形成が“そこ”にあったのに、次の日には、見当違いの“期待値”を吹っ掛けられても、「そうは問屋が卸さない」わけです。

そこまで言うんだったら、「毎月、同じ量を同じ品質で、きちっと納入してください。よそは、その瞬間で高値を提示するかもしれませんが、うちは毎月、同じ料率で買いますので」となるわけです。いわゆる、「切った張ったのはったり商売」ではなく、「血の通ったお付き合い」が求められるわけです。

確かに、今の現状は、殺伐とした乱世に違いないのかもしれませんが、長い目で己の商売を俯瞰したときに、少なからずいくつかの要所で、「融通が利かない」事態に巻き込まれることもあるだろうし、いつか「調子のよいことを言う人」に足を掬われる可能性が現れるのではないかと考えてしまいます。“お付き合い”は、大事にしてゆきたいものです。

いつものマレーシア

さて、本題に入ります。ここにきて、また、マレーシアが「オオカミが来たゾ!」と騒いでいます。BIR(The Bureau of International Recycling)のウェブサイトに、概要説明がありましたので、DeepL翻訳したものをそのまま(一部、筆者修正)貼り付けさせていただきます。

国際貿易産業省(MITI)は、マレーシアに輸出されるすべての金属スクラップについて、出荷前の検査、承認証(CoA)の発行、荷下ろし前の出荷後の検査を要求しています。 本ガイドラインでは、CoAの発行、出荷前検査、輸入時の出荷後検査の要件を規定している。CoAには銀行保証が必要である。ガイドラインには、予定された廃棄物やその他の不純物に関する金属スクラップの[品質]基準が含まれている。特定の等級の金属スクラップはマレーシアへの輸入が禁止されている(例:Crushedスクラップ)。ここで重要なポイントがある。
  • スクラップをマレーシアに輸入する会社は、CoAの資格を持ち、申請しなければならない
  • 出荷前に、SIRIMまたは認定された外国検査機関(FIB)での検査が必要である
  • また、SIRIMにCoAの申請を行い、マレーシアの入国港で船上で出荷後検査を行う必要がある

丁度、2年ほど前、当ブログにて、『マレーシアの裏切り』という記事をポストしました。

当該記事の中で、筆者は、「東南アジアの国々というのは、基本的にガッツがありません。同地域の優位性は、安い労働資源が比較的容易に獲得できることにあります。それ以下でも、それ以上でもありません」と述べさせていただきました。また、「かつての(中国の)ような物量を定常的に受け入れ、“オフブラック”な荷物を見過ごすような度量は、既に持ち合わせていない」とも言及しました。

今回も、ああでもないこうでもないとジタバタしながら、“苦肉の中途半端な中庸策”を講じたフリをして、現状維持なのか。はたまた、ある程度の“制限”を設け、「欲しいモノだけ受け入れてゆく」のか。個人的には、後者ではないかと踏んでいます。大前提として、本当に大陸が、「マレーシアは、原料加工のハブとして生かされるべきだ」と考えれば、それ相応の“配慮”があって然るべきです。また、地政学上のリスクを考えると、海上ルートに依存してまで、マレーシアを軸にスクラップ貿易を無理くり維持する必要性もない。

マレーシアとしては、環境負荷の高い“後進国”と名指しされることは、なんとしてでも避けたい。でも、外貨獲得のためにも、スクラップ貿易は継続したい。そうすると、「じゃあ、量より質を追求するか」というハナシになるんだと思います。製品市場でも、マレーシアは、これまで「“付加価値”を高める場所」として機能してきた部分があると思います。例えば、エアコンに使われる銅管なんかも、そのようであると思います。汎用品は、タイで生産して、一部の特殊形状・仕様は、マレーシアで加工する。

国を閉ざすのが鎖国の目的ではない

まあ、そんな「どうなるかわからないコト」に固執するのは、やめにしましょう。ただ、「こうなったときに、こう動く」といった対策は必要なのかもしれません。個人的に注目しているのは、「マレーシアの入国港で船上で出荷後検査を行う」という部分です。字面だけを追えば、「輸出国側での事前検査・申請内容と、マレーシア側での受け入れ時のそれに齟齬がないか、実際に開梱して確認するよ」ということだと思います。

究極を言ってしまえば、「シップバック(見せしめ)案件をつくるための口実」ということではないでしょうか。だから、「認証を得る条件の中に、インポーター/コンサイニーの銀行保証が盛り込まれている」のだと思います。(これまで、当該条件が、現行のライセンス申請時にあったのか否かはわかりません。)つまり、今回の“騒動”は、マレーシア通関による「水際対策の強化」と「通関効率の改善」に集約されると考えています。

実際の“金属原料”の範疇を、「どこからどこまでにするか」という事務的な部分は、既に決まっていることなのかもしれませんが、実際のところは、もっと実利的な部分を加味して、“塩梅(コンセンサス)”が、政府のハイレベルで調整されていくことになるでしょう。もしかしたら、冗談抜きで「この国は、嫌いだから、検査厳しくしちゃおうかな」といった“差別”が平然と行われる可能性もあります。国際政治上のパワーバランスを推し量る一種のツールとして機能してゆくかもしれません。

ここで、ひとつ確かなコトを挙げるとすれば、「人は裏切る」ということです。「握手をしながら、相手の足を踏む」ことで、お互いの存在感を示す交渉の場では、当然のことですが、あまりにも、“当たり前”のようにお互いの思惑が合致し続けると、それを忘れてしまいます。「これまで、うまくやってきたんだから、明日もうまくいくだろう」といった慢心に繋がります。何度も申し上げますが、“お付き合い”は、大事にしてゆきたいものです。

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