オオカミが来たゾ

「羊飼いと狼」というハナシをご存知でしょうか。もしかしたら、「オオカミ少年」という題名で記憶されておられるかもしれません。イソップ寓話に登場する、「羊飼いの少年が、『オオカミが来た!』と噓をついて大人たちを困らせ、終いには本当にオオカミがやってきて、飼っていた羊を食い殺されてしまう」という逸話です。

少年が「信用を失ってしまい、誰からの支持をも得られなかった」がために、このような惨事に陥ってしまいます。このハナシは、子供向けの寓話としてよく知られていますが、人として社会生活を送る上では、いくつになっても、このような“信用問題”について、真剣に考え、慎重に行動してゆかねばなりません。

スーパーサイクルって、陳腐な業界用語

最近、色んなトコロで、「金属は、需要が底堅いから、これからもアゲ続ける」だの、「100年間で数回あるかないかの“スーパーサイクル”に入ったから」云々といったハナシを耳にします。個人的には、大手証券会社のアナリストや、一部の金融機関が発信する、ポジション・トークの類だと思っています

仮に、そのようであったとして、仮に、彼らがいうところの“10年サイクル”が途中で崩れたとしても、彼らは、「どうやら、件(くだん)のウィルス騒動を通して、マーケットのトレンドは、根本から変わってしまったようだ!」などと、平気で嘯くでしょう。

要は、「モノは言いよう」なわけです。昨今、めっきり世間の耳目から姿を消した、「地球“温暖化”問題」とリンクする部分があります。為政者は、「CO2が地球の温暖化に繋がるんだ!(だから、絶対に削減しなければならない)」という思想を軟化させ、「最近になってわかってきたことなんだけど…もう少し、長い時間軸で地球の活動状況を俯瞰すれば、“寒冷化”することも十分に憂慮していかなきゃいけないんだよね…まあ、地球にやさしいことを続けていくことには変わりないんだけどね…だから、“気候変動”問題に、きちっと対応していきましょうよ」といった風情で、ハナシをすり替えます。

なにを守るために環境対策を行うのか

結局のところ、「CO2を排出することが悪」なのか、「資源を際限なく消費することが悪」なのか、判然としません。もし、前者なのであれば、既存の資源消費の仕方を維持しつつ、CO2排出を抑えられるような新技術に投資をしてゆけばいいはずです。しかしながら、今現在、世界では、「ロックフェラー財団が、エクソンモービルの株を売却」したり、「大手資源エネルギー企業群が、再生エネルギーに事業転換」しています。手詰まりでしょうか。

もう、この際だから言ってしまいましょうよ。「土をほじくり返さなくても、資源は身の回りにたくさん溢れているんだ」ということを。そして、「かつての資源エネルギーを取り巻く利権構造が根本から変わった」ということも事実だろうし、資本家が、「そもそも、このネタ、あと何年やるつもり?そろそろ、新しい商売のネタないの?」という突き上げを、大企業に対して行っていても不思議ではありません。陳腐化していませんか、ということだと思います。

The Wall Street Journalによれば、

参照記事:" Commodities Supercycle Looks Like a Stretch - Some investors are betting prices will surge over a long period, but history suggests the conditions aren’t right"

総じて…

  • 長期にわたって商品価格が連動して上昇する可能性は低い。このようなサイクルは稀
  • (スーパーサイクルは、)米国や中国などの主要経済国が急激な工業化や都市化を進め、既存の供給では対応できないような原材料の需要が発生した場合に発生
  • 資源価格の高騰が長期間続く場合、3つの事象が起きる可能性がある。1つ目は、1970年代のアラブの石油禁輸による不景気のような経済的ショック。2つ目は、採掘業者やエネルギー生産者、農業従事者が利益を得ようと供給を急ぐこと。3つ目は、より安価な代替品が現れるということ

原油に関連して…

  • エネルギー市場の国際的な指標であるブレント原油の価格は、10月末から82%も上昇
  • JPモルガン・チェース社の石油・ガス調査部門の責任者であるクリスティアン・マレック氏は、米国の生産は、連邦政府の土地での掘削制限や生産者の緊縮財政により、急激な消費回復に対して、供給が追いつかないだろうと述べている
  • しかし、実際には、坑井での排出ガスを削減の動きが生産コスト上昇に繋がり、大手石油会社は原油の代わりに再生可能なエネルギー源に投資している

銅に関して…

  • 銅の価格は2011年以降で最も高い
  • ゴールドマン・サックス・グループは、今後1年間で銅の価格は史上最高値の10,500ドルになると見ている
  • 金属価格は、旺盛な商品需要と経済の停滞からの脱却の恩恵を受けているが、この2つの要因はいずれも薄れていく
  • 新規プロジェクトが始まり、生産を開始する予定(供給力の改善)

決まりきったことを粛々と

この先、なにが起こるのかということは、「神のみぞ知る」ことであります。ただ、間違いない事実としては、只今の金属市況の盛り上がりが、「じゃぶじゃぶのカネ余り」を前提とした「理想の上に築かれた単なる期待値」でしかないということであります。そして、「環境規制による倫理的な“足枷(あしかせ)”」と、「ウィルス騒動による物理的な“それ”」が、生産活動(供給)回復の重しになっているということです。

そして、もし、現在の「うだつは上がらないのに、相場だけはいい」状況が、人為的なコントロールできる要素に左右されているのであれば、巷で騒がれているような“アゲ・トレンド”は、実在しないことになります。言い換えれば、「単に乗せられているだけ」です。もっと言ってしまえば、「コントロールできる側の人間は、終わりを知っている」ということになります。

普通に考えれば

それら“足枷”がなければ、我々は、これまで通りのモノづくりの仕方で、これまで通り、滞りなく生産活動ができたわけです。海上コンテナが不足することも、運賃が高止まりすることもなかったはずです。これまで通り、好きな時に好きなだけ海外に足を運んで、好きな人と好きなだけ商売ができたはずです。もっと言ってしまえば、各国政府による異次元の財政出動もなかったでしょうから、現在のような「じゃぶじゃぶのカネ余り」にはならなかったわけです。恐らく、相場も淡々と「それ相応の」水準で推移していたものと考えられます。

「オオカミが来たゾ!」

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