リアルタイムでパラジウムの採掘状況がわかるそうですが、つまりそれはAI

皆さんは、海外の取引先と対峙したとき、どのような手段で、"思い"を伝えますか。これから、前回のポストで言及した通り、日本国内での分断が起き、これまで当たり前に供給・物流できていたモノが、突然ダメになる可能性はゼロではないと思います。一方で、対極の動きとして、これまで「遠くて遠い国(地理的な距離だけでなく、なんらかの障壁があり、これまで取引が起こらなかった国々)」が、「遠くて近い国」になる可能性もゼロではありません。今般のウィルス騒動は、物流におけるコスト、貿易自体のあり方、すべてを変革する素地を持っていると考えています。

例のごとく、大きく脱線しそうなので、妄想論はココまでとしますが、お伝えしたかったのは、「これまで付き合ってこなかった人々に対して、能動的に存在をアピールする必要がある」ということです。それは、海外だけでなく、同じ国の中でも、同じことが言えます。みんながみんな、シュリンクする経済ににありながらも、もしかしたら、まだ繋がっていない経済圏があって、それらを繋げることで、商売として成立する可能性は、十二分にあるわけです。そういった商売の"醍醐味"のような部分を、巷では"営業"などと呼ぶのかもしれません。

ただ、今の現状の中では、「旧来の対面式"営業"で、商談まで導く」ことは、非常に難しいと感じています。人々の移動や、"越境"に制限があるからです。ただでさえ、いわゆる"飛び込み営業"は、大変でした。介在余地が薄い業界なんかは、特にそうだと思いますが、訪問したところで、「間に合ってるよ!忙しいんだから、邪魔しないでくれ」だとか、「で、結局いくらなの?おたくの競合は、これぐらい出してるんだから、契約するには、少なくとも、その見積もりより高くないとね」などと言われるのが関の山でした。

越境するコストは上がったけど、交流するコストは下がった

おそらく、"リージョナリズム"が浸透するにつれ、みんな必死に、「安く安定的に売れるトコロ」を探し回ります。そして、「商材をどうやって、うまく売るのか」ということも、当然のことながら考えるようになります。商流にせよ、ものづくりの仕方にせよ、ノウハウが蓄積されれば、"パイオニア"が市場をつくり、"フォロワー"が市場を大きくします。人間ができる経済の回し方というのは、有史なのか、それ以前の世界から、ひとつも変わっていません。

ただ、やり方の根っこの部分は変わりませんが、その"やり方"を効率的に、迅速に済ませる技術というのは、我々の歴史のなかで生まれてきました。いわゆる"産業革命"と呼ばれるものです。卑近な例で言えば、金属の精錬技術が向上したり、機械の登場で、これまで人力で一日かけて引いていた重量物が、ものの一時間で終わるようになりました。

翻訳家は、もういらない

今、まさに言われているのは、"AIによる産業革命"ですよね。IT企業の営業文句のようになってきましたが、これは、かつての"ITバブル"とか、そんなチャラついた変化とは比較にならないと考えています。なにがすごいかというと、「人間の脳みそ(思考回路)でできることは、大概できる」んですね。最近、筆者がいちばん感銘を受けたのは、「言葉のバリア(障壁)が随分と低くなる」という点です。

試しに、DeepLというサイトで、近頃、筆者が気になっている、「ロシアのパラジウム政策」について書かれた記事を翻訳させてみましょう。

参照:"Norilsk Nickel says it is entering new era of real-time mine control and connectivity"

Sergey Dyachenko, First Vice President and COO at MMC Norilsk Nickel states: “We already monitor around 80% of our production processes in real time. All of our mines can effectively track their current production indicators at cycle-level granularity. We are now considering possible roll-out of 5G or LTE networks to support our dynamic production environment. This will bring connectivity to the most remote parts of the mine and enable real-time data transmission by all underground equipment.”

DeepLの翻訳:『ノリルスク・ニッケルは、リアルタイムの鉱山制御と接続性の新時代に突入していると述べています

MMC ノリルスク・ニッケルの第一副社長兼COOであるセルゲイ・ダイナチェンコ氏は次のように述べています。"当社では、すでに生産プロセスの約80%をリアルタイムで監視しています。当社のすべての鉱山は、サイクルレベルの粒度で現在の生産指標を効果的に追跡することができます。私たちは現在、ダイナミックな生産環境をサポートするために、5GまたはLTEネットワークの展開を検討しています。これにより、鉱山の最も遠隔地にも接続性がもたらされ、すべての地下機器によるリアルタイムのデータ伝送が可能になります。"

この翻訳結果をみて、まず先に感じたのは、「温かみのある言い方だな」ということです。正直、これまでも翻訳サイトは、星の数ほど存在していましたが、結局は、大手のアルゴリズムなり、システムをそのまま使っているだけで、代わり映えはしませんでした。あと、人の名前を、日本語読みっぽくしてくれるところとか、修飾関係の再構築の仕方など、「良いな」と思わせる部分は、そこらじゅうに散りばめられています。

その"温かみ"とか、"良さ"を感じさせる部分は、「人間のクセを知り尽くしているから」なんでしょうね。それが、AIの真の意味の恐ろしさであり、可能性であると信じています。ここまでの"人間ぽさ"を演じきれるAIの存在を鑑みると、実のところ、「異言語間でのコミュニケーション・コストは、思いの外安くなっている」のです。言い換えると、「英語でウチの製品の営業できないから…」などと、躊躇する理由はないのです。

翻って、記事の中身

「リアルタイムで採掘の進捗状況がわかる」ということは、今まで、さっぱり把握しないまま、「うおー!今日は、パラジウムが、こんだけ採れたゾー!」だとか、「今日は、こんだけしか採れなかった。ぴえん」といった感じで、仕事してたわけですよね。そして、その不確定要素(生産状況や、ストなど)が、市場に「上げだの下げだの」をシグナルとして送っていたわけです。最終的に、その情報をもとにして、色んな思惑が動いて、相場が揺れていたものと理解しています。

だけど、いいんですかね。いわゆる"透明性"が出ることで、企業価値とか、"持続性"みたいな部分は向上するのかもしれませんが、金属マーケットへの影響は、未知数ですよね。プーチン先生は、こんな風に考えているのかもしれません。「あまり、難しいことは考えるな。困ったら、俺が管理してやるから」と。

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