エアコンの銅管メーカーの業界再編から見える、某財閥の思惑

2022年になりました。下の画像は、筆者の一族の出身地から、山梨県の平野部を見下ろした風景です。筆者の妄想では、我々の祖先は、「遥か西の山から静岡県を経由して、富士川を上り、この地に文化を花開かせた一族」に近しかった。悠久の歴史に想いをはせながら、この風景を味わうのです。

エムキャップ七号株式会社とは

昨年末、伸銅品関連のニュースを読み漁っていたところ、大変興味深い情報を得ました。その中で、「エムキャップ七号株式会社(MCAP社)」という聞きなれない社名を見つけます。三菱マテリアル社のプレスリリースには、このような説明がございます。

MCAP社は、株式会社丸の内キャピタル(以下「丸の内キャピタル社」)が管理・運営する丸の内キャピタル第2号投資事業有限責任組合がその持分の全てを保有する特別目的会社です。

同プレスリリースによると、結論は下記の通りです。

KMCT社(株式会社コベルコマテリアル銅管)の将来的な事業成長と企業価値向上のためには、丸の内キャピタル社による経営面および資金面での全面的な支援の下で同社が運営されることが最適であると判断し、本譲渡を決定いたしました。本譲渡において、当社はKMCT社の発行済株式の45%を、神鋼社はKMCT社の発行済株式の55%を、それぞれ譲渡する予定です。

KMCT社の由緒は、下記の通りです。

KMCT社は、当社と株式会社神戸製鋼所(以下「神鋼社」)の銅管製造・販売事業を統合し、2004年4月に設立され、日本及び東南アジア地域を中心とした空調用銅管、建築・給水給湯用銅管等の製造・販売を手掛けております。

筆者の解釈では、日本の政経をぎゅ、陰で支えていらっしゃる“金曜会”の会合で、「お前のところは、取り潰しじゃ。JIS認証を外されたら、元も子もないじゃろ(再承認されていますが)」と、鶴の一声で決まったものと考えています。

どういった背景で、“品質保証問題”が表沙汰になったのか、その辺りは、よくわかりませんが。三菱マテリアルと神戸製鋼の協力関係を、なんとしてでも解消したい、そのように画策する方もおられたのではないか、そのようにも邪推してしまいます。

末路として、どうなったのかということは、日経新聞(オンライン版)『神鋼と三菱マ、銅管事業から撤退 国内ファンド系に譲渡』に記載があります。

神戸製鋼は2つの子会社の譲渡で、三菱マテはコベルコマテリアル銅管の譲渡で、ともに銅管事業から撤退することになる。

以下、特記事項です。

1) 同社(KMCT)を巡っては19年に別のファンドのSPCに株式を譲渡することを発表していたが、新型コロナウイルスの影響で業績見通しが不透明となり、20年12月に売却を中止していた。
2) 神戸製鋼所は同日、90%出資する銅管子会社の神鋼メタルプロダクツ(北九州市)の全株式を丸の内キャピタルの同SPCに譲渡すると発表した。

つまり、19年当初に予定していた売却先ではなく、「コロナの影響で」、MCAP社への売却に変更になったということらしいのです。まあ、この2年ほど、色々ありましたからねえ。工場サイドでも、操業停止に追いやられる局面もありましたし…「巣ごもり需要で、白物家電、特に空調系は絶好調!」みたいなハナシもありましたし。…あれ?好調だったのではないでしょうのか。

もうひとつ気になったのは、神鋼メタルプロダクツのハナシです。同社も、同じくMCAP社に買い上げられることとなったとのこと。筆者のイメージでは、同社の製造品目は、キュプロやアルミブラスを使用した産業用の空調部品が主であったと思います。なぜ、同社が“お買い上げ”の対象になったのかは、見当もつきませんが。考えられるとしたら、鉄鋼業界の再編がらみでしょうか。

ホントは、古河の銅管事業と“抱き合わせ”で買われる予定だった

あんまり、こういう副題をつけると語弊があるかもしれませんが、おおよそ事実のようです。19年10月の産業新聞(オンライン版) 『日本産業パートナーズ 一体運営で中国勢に対抗』には、このような言及があります。

投資会社の日本産業パートナーズ(東京都千代田区、馬上英実社長)はこのほど産業新聞の取材に応じ、来春予定しているコベルコマテリアル銅管(本社=東京都新宿区、KMCT)と古河電気工業銅管事業の取得について、両事業を一体運営することで世界トップクラスの高性能銅管メーカーとして中国勢に対抗できるようになるとの考えを示した。

このハナシは、国内で完結させようとすると、非常に浅い印象しか残りませんが、実際には、この当時、古河電工のタイ工場に関する資本のやり取りに関して、非常に熱い議論がなされていたようです。

つまり、伸銅品業界として「グローバル市場における、中国の銅管メーカーの存在感に脅威を感じていた」ことは間違いなく、国策として「グローバル、特に東南アジア地域におけるパイを、日の丸チームとして死守せねば」という思案がなされていた可能性は否定できません。

結局のところ財閥の覇権争いか

そういった“喫緊の課題”が持ち上がる中で、KMTC社、神鋼メタル社、ひいては両親会社の“品質保証問題”が急浮上し、冒頭の2社に至っては、「JIS認証の取り消し」という事態にまで発展しました。

どこまで、この“失態”を織り込み済みだったのか、契機はどこにあったのか、そういったことは全くもって想像もできませんが、ベイン・みずほ系の日本産業パートナーズが声を上げ、終いには「コロナの影響で」振出しに戻った。その後、カーライル・三菱系のMCAP社が颯爽とかっさらっていった。

今回のハナシは、“天界”で繰り広げられる争いを、下界の人間が、「ああだのこうだの」と妄想を織り交ぜながら、面白おかしく書いているだけに過ぎません。

ただ、ひとつ断言できることがあります。それは、「素材産業の構造が、大きく変化している」ということであります。ひいては、「動脈としての製販、静脈としての再生」の両輪が、これまで以上に、多大な変化を強いられる可能性が大きいということです。

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