ワケることは、分かること

今日も一生懸命、ワケていました。無我夢中でワケていました、砲金を。あの甲高い、キン!という鳴き声。金属マニアにしかわからない、癒しの音でございます。

昨今、色んな方々と商売の話をする機会に恵まれております。つくづく、感じるのは、「屑屋」と「原料屋」の感性の違いです。それは、利益の生み出し方かもしれませんし、有価資源に対する思い入れの熱量、視座など言い出したらきりがありません。結局のところ、「屑屋」も「原料屋」も扱っているものは同じなので、言葉のアヤとでもいいましょうか、"根"の部分はまったく同じです。おそらく、「原料屋」は単純な"カッコつけ"であって、選り好みの激しい欲張りであると言い切っても過言ではないと思います。

ここまで言い切っても、私は「原料屋」でありたいと願ってしまいます。なぜかというと、「金属のことを、もっと分かりたい」という欲が原点であり、「(需要家の要求に沿って)分けることで付加価値を生み出したい」し、「お客さんに喜んでもらいたい」というのがポリシーであり、あわよくば「人がやらないことをやって、対価としての金銭を稼ぎたい」というのが芯にあるからです。

燦然たるベチュベチュ

少し脱線しますが、最近、某東南アジア出身の同世代と仕事をしています。まだ、日本語はたどたどしく、説明に難儀することも多々ありますが、仕事はとても真面目です。新しい知識を得ることで、「もしかしたら、この知識・経験をもとに、自分の国で同じことをやったら、儲かるんじゃないか」と思ったであろう瞬間の、彼らの喜びの表情は、とても輝いています。

そんな彼らから受けた質問の中で、ひとつ心に残るものがありました。

「コレと、これは、ベチュベチュですか?

当初、この質問を受けた際、真面目に南米の古代遺跡の情景が浮かんでしまいましたが、本質はそこではありません。語彙の選択に、若干の可愛げがありながらも、我々の業界において、純然たる商売の極意として君臨しながらも、非常に忘れられがちな、「"分ける"ことで付加価値が生まれるかもしれない」という最初の疑念を、彼らは持っているのです。

心理学の教科書にも載っていました。「"分ける"ということは、"分かる"ということと同一である」と。また、「分かるということは、物事の良し悪しの基準が明確になっている状態である」とも。

これは、間違った見解かもしれませんが、どうでしょう。若輩者がこんなことを提言することも憚られますが、我々の業界における全盛期とは、単に「中華帝国の掌の上で踊らされていた」んであって、「きちんと"分ける"ことで得られたかもしれない旨味」もなにもかも、すべて一切合切、"あちら側"に提供していたように思うのです。暖かい気候の中で、ゆるく生活していると「まあ、これぐらいでもいいや」だとか、「明日のことは、明日考えればいいよ」的な超楽観的な思考に陥りがちです。実際に、7類が禁止される運びとなった時に、最も右往左往していたのは、いわゆる大手の貿易屋さんたちだったと記憶しています。

こんなとき、思い出すフレーズがあります。それは、神奈川県の某大手問屋さんの社長さんが常々仰っていたことであります。

俺らは、所詮クズ屋なんだよ。お客さんにコウベを垂らして、どんな風に見られようが、どんな手段を使ってでも、可能な限り安く仕入れる。売ることなんて、買ってから考えればいいんだよ。油まみれになりながら、埃まみれになりながら、きちんと仕分けをしながら、がむしゃらにやっていれば、利益なんぞ、自ずとついてくる。
仁義だけは、大事にしなければならない。多少、高く売れるからといって、信用のならない業者に首をつっこむのは、無駄である。毎月、毎回、同じように商品を受け入れてくれて、同じように支払いをしてくれる顧客がいるんであれば、そこを蔑ろにする理由はない。今日は良くても、明日は「買いません」じゃあ、なんのための商売だ。
いわゆるメーカーとの長期契約っていうのは、基本的には"怖い"よね。毎月安定的に仕入れができるかという不安もあるし、欲張って背伸びをしたところで、ションベン(契約不履行)しちゃうかもしれない。ただ、ひとつ言えるのは、"上がる"局面があれば、"下がる"局面も当然現れる。それが、相場モノを扱う人間にとっての醍醐味っていうヤツなんだけど、"下がる"ときって、普通の人は味方してくれないんだよな。そんなとき、コツコツ真面目に、需要家へ契約通り毎月納めていたら、どうだろう。やっぱり、渋い顔をしながら「お付き合いですから」とか言いながら、買ってくれるんだよね。スクラップは"人"なんだよ。

巷では、「中国がクオータ制度を廃止して、"無尽蔵に"スクラップ買うらしい!"恵"の雨じゃ!」という声が席巻しております。個人的にも、素晴らしいことであると思いますし、「原料屋になりたい」などと嘯く輩であるからこそ、大陸のマーケットは攻め落としたいと意気込むワケです。しかしながら、「無尽蔵に買いますよ!」の立て札の隅っこには、但し書きとして「品質は、◯◯%にて。その他、返品対象とする」とある。

これは、本当に「大陸から降り注ぐ、恵の雨」なのでしょうか。

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