スクラップ屋の頑固オヤジが本当に危惧している日本の資源政策

年の瀬を迎えるにあたり、面白いニュースがいくつか舞い込んでまいりました。(先月末に作成していた記事がポストできていませんでした。少し古いネタですが、加筆したものを投稿します。)

非鉄金属製品商社が狙うモノとは

参照: M&A Online 『アルコニックス<3036>、空調機器向け配管部品メーカーの富士根産業を子会社化

アルコニックスが、空調関連の製造会社を子会社として迎え入れるようです。同社がかつてから標榜していた(動脈から静脈まで)を体現する流れとなりました。表面的には、製販一体、"流通"plusモノづくりの流れに違いないんでしょうが、結局のところ、これまで実際には分断していた商流の"ワ"の部分を、真の意味で「全部かっさらっていくぜ」という大きな志の表れです。"それ"は、"輪"でも"和"でもいいんですが、既存のエコシステムを掌握するという意味では、業界における破壊的なイノベーションであると思います。

当金属スクラップ再生業界の観点からみても、このアクションは無視できないものと捉えています。仮に、"一連の流れ"を独占するのであれば、モノづくりをする上で必ず排出されるスクラップの"シマ"に対しても、同様のメスを入れるのではないでしょうか。素材系商社が、材料を納め、排出されたスクラップ"をリターン材"として回収し、当該素材のメーカーへ献上(返納)する商売のやり方です。

この"やり方"が増えると、最も割を喰うのは、これまで工場からNewスクラップの引き取りを行っていた業者だと思います。次に、その工場自体も、"様々な理由"で旨味がなくなってしまいます。その理由は、それぞれだと思うので、一概になんとも言えませんが、まあ、要は色んな方々の"和"を乱してしまうことは間違いないわけです。

一方で、大手のメーカーへ直接納入している業者、メーカー自身は、これまで通りの商売ができるため、大きな"痛み"はないものと考えています。むしろ、そうなることで"旨味"はマシマシのモリモリかもしれません。というのも、これまで散々言及してきましたが、端的に申し上げれば、メーカー側は、「公然と中抜きができる」からです。言い換えれば、これまで冗長的であった商流を簡略化できる。品質の面は、信頼の置ける問屋に管理させれば、画一的な"原料"の安定購買ができます。販管費の大きな圧縮ができます。時代は、変わります。中途半端な商売は、淘汰される運命にあるのかもしれません。

上記を受け、株価が上がりきった7日、同社の子会社が不正会計をして云々等の報道がなされましたね。雑多なモノを包含してゆく過程では、必ず"膿"が出ます。たられば論で恐縮ですが、もし「静脈も押さえる」決意があるのであれば、もっともっと濃い"それ"と対峙しなければなりません。

商社も、現在のような経営環境下では、あらゆる視点でマージンを稼ごうとするでしょう。当然のように、クリーンな"原料"は、アルコニックス本体が消化し、ダーティな"ゴミ"は、紐付いている関連会社に「喰わせる」ようなことをやるでしょう。押し付けられた側は、おそらく「人件費が安い"どこか"に丸投げするしかない」と考えているかもしれません。あくまでも、妄想でしかありませんが。動脈産業の人間は、静脈産業の行く末など気にはしていません。"そこ"で責任を切り離せればいいや。その程度にしか捉えてないと思います。

国境を跨ぐ必要性とはいかに

NHK News Web 『中国とのビジネス関係者などの往来 きょう30日から再開

どこそこの国からの往来は、時期尚早ではないか、といったハナシではありません。個人的には、「今、遠方(海外問わず)にわざわざ"赴く"必要って、そこまである?」というハナシであります。だって、地球上のみんな、"リモート"だのなんだのと託(かこつ)けて、内に籠っている状況ですよ。まあ、駐在員や遠方に法人を持っていて、実務上、生身の人間がどうのこうのしないと完結しない状況にある方々にとっては、「やっと」といった心持でしょう。

ただ、遠方との往来を始めると付きまとうのは、自分の大切な人たちに対して、今般のウィルスに限らず、「なんらかの病原体を感染させるリスクがある」ということです。天涯孤独で、どこにいてもヒトリで完結するお方ならば、なんの問題もないのでしょう。しかし、我ら、社会に生きる種族です。故意であろうがなかろうが、同じ種族に良いことも悪いことも伝播させながら、豊かな社会とやらを構築して参りました。仮に、「俺は、細心の注意を払い、数々の対策をしてきた。ワクチンも打ったから大丈夫だ」と、高らかに宣言したからといっても、"媒介者"になる可能性はゼロでないし、どんな些細なことでも、なんらかの形で「社会的な制裁を受ける可能性は否定できない」わけです。

戦国時代における鉄則

産経新聞Web 『中国外務省報道官「目を突かれて失明しないよう注意しろ」 香港めぐり5カ国恫喝

我々は、どうやら気づかぬ間に、戦争の真っただ中にいるようです。今のところ、"我々の日常"の中で肉弾戦は起こっていないようですが。聞くところによれば、人民解放軍が実践の準備を着々と進めているとかいないとか。噂なので、よくわかりませんが。間違いないのは、"きな臭さ"が大戦前に近い水準に近づいているということです。「覇権を握りたければ、敵が弱っているときに徹底的に」というのは、戦争の鉄則だと思います。歴史が物語っています。

これまで、中国に"べったり"であったオーストラリア。鉱物、食品関連の貿易を中心に、お互いにヤンヤヤンヤとやりあっているようですが、絶対に勝てないですよね。負け戦だとわかっていても、やる。やらなければならない。なんだかんだ言っても、大英帝国の一部です。所詮は、帝国対帝国の覇権争いの一コマでしかありません。

たしか、日本も同ファイブアイズのメンバーになりたがっていたような気がします。国防上のインテリジェンス機能は、先進国の中で最低レベルにある。そのようなハナシを聞いたことがあります。日米安保の枠組みの中で、やれることに制限もあるのでしょうが、あまり中途半端なことをやっていると、本当に隣国から"目つぶし"されますよね。

これは、国民全体の問題である

上記のインテリジェンスとも関連のある事柄でありますが、日本の資源政策は、本当に"大丈夫"なのでしょうか。巷では、「中国の銅の需要はすごい!」みたいなハナシが盛んに行われていますが、果たしてそれは、同国の産業が「実際に必要としている需要」なのでしょうか。そりゃあ、「欲しい、欲しい」と言われれば、それが"実需"なんでしょうが。先日、とある業界のセミナーに参加したときに、中国人のパネリストは、このように言っていました。確かに、産業用途の需要も堅調ではあるが、昨今の"特需"の下支えは、政府による「有事を想定した"戦略物資"の備蓄量を増やすための動きである」と。

こういった情勢を鑑みながら、需給の調整然り、今後の資源政策を考えるのが、政府の仕事だと思います。しかしながら、残念ながら、我々静脈産業に従事する人間の耳には、明るい未来は見えてきません。聞こえてくるのは、ただただ、信憑性の薄い「中国、銅ホシイ」といったハナシと、「コンテナが手配できないんだよね」といった"言い訳"でしかありません。本来であれば、「近いうちに中国が鉄を買い漁っていくが、日本としては、このように対応してゆく」だとか、「廃プラを適正処理して、どうやって再生させるのか、または別の資源として活用するには、どうしたら良いのだろうか」といった建設的なハナシが求められます。

今の段階では、静脈産業に突き付けられた課題であって、あたかも"我々"自身がどうにかこうにかして、解決の糸口を見つけなければならないような扱われ方です。しかしながら、実際は、もっと深く大きな問題であって、"我々"の範疇を拡大しなければならない。喫緊の"環境対策"を講じなければならないことは、百も承知であるが、もっとその先にそびえる大樹の処遇(資源政策) を、きちっと考えていかなければならない。もう、「俺たちには、ゴミのことなんかわからない。"アイツら"に金を渡して、どうにかしてもらえばいいや」的な発想は、時代錯誤でしかないと思う。

そのように、近所のスクラップ屋の頑固オヤジが申しておりました。

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